2017 Fiscal Year Research-status Report
Recovery, Publication, and Analysis of Japanese Aynu and South-Andean Aymara Oral Texts
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17K02741
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
藤田 護 慶應義塾大学, 環境情報学部(藤沢), 講師 (50726346)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 先住民言語 / 口承文学 / オーラルヒストリー / 先住民文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
アイヌ語の資料の回復・翻刻・公開に向けた作業としては、北海道立図書館が改修の際のアスベストの問題で年度を通じて(2018年度まで)閉館となってしまい、当該資料の直接の閲覧に基づく整理収集作業が出来なくなってしまったが、間接的な取り寄せの仕組みを通じて同作業に取り組んでいる。年度を通じて知里真志保宛金成マツノート所収の散文説話の翻刻と日本語への翻訳作業を進め、年度内に一話を原文対訳と考察を付して交換することができた。また、分析としては、散文説話が話者から話者へと伝承される際に被る変容に着目することで、それを通じて話者ごとの文化観・社会観が明らかになるのではないかとの仮説にもとづき、検討を進め、小規模なセミナーで発表するとともに、論文をまとめ、公刊した。また、アイヌ語の口承文学やオーラルヒストリーとの向き合い方を主題とする、津島佑子の小説『ジャッカ・ドフニ』を分析し、論文として公刊した。 南米アンデス・アイマラ語の研究については、アイマラ語での日常会話を録音する作業を進め、録音資料の整理・書き起こしに取り組んだ。また、アイマラ語の口承文学の録音と書き起こし作業を進めた。また、アイマラ語の口承の語りを主題としたスぺディングの長篇小説『ときどきサトゥルニーナ(De cuando en cuando Saturnina)』について、その口承言語との関りにもとづき分析を行い、国際学会に発表するとともに、現在現地での論文としての公刊に向け作業を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のように、アイヌ語とアイマラ語の両面について資料の収集・整理・公刊、およびその分析とその分析結果の公刊のそれぞれの面で進展を見ており、研究はおおむね順調に進んでいると考えてよいと思う。しかしながら、研究者の少ない分野で為すべき課題は非常に多く、より一層の進展を実現すべく尽力したい。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度以降に向けて、資料の収集・整理・公開に向けた作業に引き続き取り組むとともに、理論的検討、すなわちアイヌ語とアイマラ語の口承の語りを比較分析できる土台となる枠組みの構築に取り組み、2018年度中に一定の成果を公刊したい。また、アイマラ語については、未公開の資料がアーカイブに想定よりも多く残っていることが明らかになりつつあり、改めてその整理と公刊に向けた作業を現地と調整し直して進めていきたい。アイヌ語については、幌別方言の資料が上述の北海道立図書館の問題で、資料の全体像の体系的整理に取り組むことが難しいが、入手できた資料をもとに分析を進め、同時に十勝方言の未公開資料の整理作業に関わっているため両資料を視野に入れた分析と考察の作業を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
家庭の事情により年度後半に十分に研究時間を割くことができず、次年度使用額が生じてしまった。2018年度における現地調査への出張及び資料収集のために次年度使用額を使用したい。
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