2018 Fiscal Year Research-status Report
Recovery, Publication, and Analysis of Japanese Aynu and South-Andean Aymara Oral Texts
Project/Area Number |
17K02741
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
藤田 護 慶應義塾大学, 環境情報学部(藤沢), 講師 (50726346)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アイマラ語 / アイヌ語 / ボリビア研究 / 口承文学研究 / 言語人類学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度の研究においては、アンデス地域におけるアイマラ語とケチュア語による記録の収集にさらに取り組むとともに、研究成果の共有と公刊を進めた。2018年8月から9月のフィールド調査において、ケチュア語についてはクスコ県カルカ郡のアンデス高地の村の幼稚園を中心に、現地の人々の同意と協力を得て学校内の大人たちと子どもたちの発話の記録を収集した。これは、一人教員の幼稚園という困難な条件下で、担当教員の教育省に対する報告に資するための記録作業を兼ねており、調査対象者にも裨益する調査となっている。アイマラ語については、ラパス県ムリリョ郡の渓谷部の村で、ある家族内での会話記録を積み重ねており、これはアイマラ語のコミュニケーション文法の考察のためだけでなく、家族の記録として残しておくことが意図されており、こちらも調査対象者に裨益することを意識している。 アイヌ語に関しては、アイヌ語弁論大会を中心とし、また沙流郡平取町を繰り返し訪問する中で、現在のアイヌ語を巡る活動が、年長者と若者の双方でどのように展開しているかについて見分を深め、現在のアイヌ語の復興と習得に関して社会言語学および言語人類学の分野からの知見を蓄積した。 平成30年度は、ボリビアのアイマラ語を含めた多言語小説に関する論文を執筆し、神奈川大学の『人文研究』第195号に掲載された。また、アイヌ語についての斬新な知見をもつ津島佑子の小説『ジャッカ・ドフニ』について、日本研究に関する国際学会(57th Annual Meeting of the Association of Japanese Literary Studies)で学会発表を行い、英語版の論文の執筆を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大学学内の業務が多忙を極めているため、当初予定していた中で、アイマラ語資料の現地公刊に向けた整理作業の最終確認を平成30年度中に終えることができなかった。また、アイヌ語とアイマラ語の口承文学を比較するための理論的枠組みを整備する作業も、進展が遅れている。この両者について平成31年度中に進展を示したいと考えている。
それ以外の面では、上記項目に記したように調査、研究、および公刊に向けた取り組みの各側面において、着実な進展があった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度が本研究の最終年度となるので、追加的データの収集に努めるとともに、国際学会・国内学会での報告や論文の執筆・投稿を通じて、アイマラ語及びアイヌ語双方の記録データの公刊に努めるとともに、当初予定にある両地域の口承文学を比較するための枠組みの構築作業を進めたい。
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Causes of Carryover |
年度末に細かい残金に応じた支出を行わなかったため、若干の次年度使用額が生じている。この額自体を特定の用途に用いることは困難であろうが、次年度の助成金と合わせて、資料購入または現地調査・国際学会発表の旅費に充てたいと考えている。
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