2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K02754
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
金 情浩 京都女子大学, 文学部, 准教授 (70513852)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 選好語順 / 日本手話 / 日本語対応手話 / 脳機能イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
日本手話は音声として話される日本語と異なる文法をもつ言語で、単語は主に手指動作で、文法情報(語順も含む)の多くは手以外の動き(非手指動作、例えば、視線、表情、頭部動作など)で表現する。日本手話の場合、日本語と同様、その語順における自由度はかなり高く、二項動詞の場合、「主語<目的語<動詞」の語順(基本語順)だけではなく、「目的語<主語<動詞」の語順も「目的語<動詞<主語」の語順も許される。金(2019)では、「SOV vs. OSV」と「OSV vs. SOV」の直接比較で、前者の比較では統計的に有意な賦活領域が見られなかったが、後者の比較ではL.MFGとL.IFGに賦活が観察されたと報告している。この結果は、OSVのほうがSOVよりも統語構造が複雑であるとする理論言語学や心理言語学の仮説を支持するものである。また、先行研究のほとんどが英語のWH構文やドイツ語のかき混ぜ語順文を用いて行われていたが、手話言語におけるOSV語順文でもSOV語順文の文処理時に比べ、ブローカ野の活動がより強くなることが確認できたことから、WH移動とかき混ぜ構文のような移動の統語構造の相違や個別言語の違いにかかわらず、統語構造の複雑さとブローカ野の脳活動の相関はすべての言語で共通することを支持する結果である。しかし、統語構造を持たないジェスチャーと手話という形を使って表現した日本語対応手話、日本手話の文理解(処理)には何らかの相違がみられることが予測される。そこで、本年度は①日本手話(Japanese Sign Language: JSL)と日本語対応手話(Signed Japanese)の文処理(理解)の相違と、②非言語的に事象を把握する際にも個別言語の基本語順が選好されるかを心理言語学と認知脳科学の観点から明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究協力者(手話話者)の諸事情と刺激文の再検討に時間がかかり、予定していたスケジュールより遅れているが最終年度には問題なく遂行できる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
fMRI実験の日程調整は現段階では問題なく予定通り実施可能で、研究協力者(手話話者)からも夏以降には協力に問題がないことを確認しているので年度内に計画通りの研究遂行が可能である。
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Causes of Carryover |
一年目と二年目に予定していた調査が、刺激文の調整等の諸事情で実施できなかったため、実験参加者と研究協力者に支払う予定だった謝金経費が残る状況に至った。繰越金は最終年度の調査とfMRI実験の謝金として支出予定である。
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Research Products
(1 results)