2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K02757
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
奥村 佳代子 関西大学, 外国語学部, 教授 (10368194)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 口語体資料の研究 / 近世中国語語彙調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、特に外国人による中国語資料において、「話された言葉として記録された中国語」の語彙の分析を重点的に行った。取り上げた資料は、1593年に中国語に翻訳されたドチリナキリシタン、1900年前後に日本人によって著された『北京官話全編』、江戸時代に著された『唐話纂要』である。これらの資料は、外国人が中国語を記述したという点が共通しており、いずれも外国人の視点から中国語の話し言葉が捉えられている。本研究は、近世中国語の話し言葉と書き言葉の境界線がどこにあるのかを明らかにすることを最終的な目標とする研究の一環であるため、語彙の整理と分析は、研究全体の基礎的な作業として位置づけられる。また、外国人による話し言葉の記述を調査することは、中国人による話し言葉と書き言葉の区別を知る上で、参考となるだけでなく比較の対象ともなりうることから、欠かせない作業であると言える。この作業を通して、話し言葉として記述されている語彙が、固定的であり、語彙の種類が少ないことを確認することができた。 また、清代の档案資料集の文献調査を行った。本研究で扱う『清代档案史料選編』の関連档案を調査することが目的であり、平成30年度も引き続き調査する予定である。『清代档案史料選編』の精読を開始しデータベース作成のための入力作業の準備を開始した。資料の精読により、供述を導く複数の動詞が確認できた。こうした細かな作業は、本研究の目的のひとつである供述書における使用語彙の把握につながるものであり、供述という話された言葉を記述する行為の実態を知る手がかりとなる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
話された言葉として記述された供述書の研究にあたり、供述書以外の話された言葉として記述された中国語の知識を持っていることは不可欠である。近代以前においては、忠実に記述された可能性のある話し言葉は、外国人が中国語学習や中国語教育のために記述、編纂した教科書類やノート類に確認することができる。従来から北京官話を記述した『語言自邇集』が良質な会話資料として知られているが、2016年に本務校である関西大学に寄贈された『北京官話全編』は質量ともに従来の資料を上回るものであり、本研究の参考資料とすべきであると考えられる。『北京官話全編』を新たに参考資料として加えたことが、進捗状況がやや遅れることとなった理由の一つである。 また、清代档案資料の研究経験が浅いため、研究対象である『清代档案史料選編』を読む速度が遅いことも影響したと考えられる。 ただ、部分的にではあるが『北京官話全編』の調査じたいは順調に進んでおり、清代档案資料を読むことにも徐々に慣れてきているので平成30年度の状況がさらに遅れるということはないものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
限られた研究時間であることを再認識し、今後は新たな資料を参考資料として追加することなく、本研究が調査対象としている『清代档案史料選編』の供述部分の入力作業に集中して取り組み早急に完成させたい。 入力状況の遅延を放置せず、必要に応じてアルバイトの補助を得るようにする考えである。
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Causes of Carryover |
購入すべき図書資料の選定と取り寄せに時間を要したために次年度使用となったが、すでに資料調達の目処はたっている。今年度の助成金使用計画は以下のとおりである。 図書資料購入費として421,308円(『淡新档案』全36巻(388,800円)、『公牘通論』(14,040円)、『清代档案史料選編』全4冊(18,468円)、旅費(資料調査、国外)として、200,000円、謝金(入力作業、研究補助)として80,000円、その他(コピー紙、USBメモリ)として7,858円を、使用する計画である。
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