2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K02757
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
奥村 佳代子 関西大学, 外国語学部, 教授 (10368194)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 口語体 / 話し言葉 / 档案資料 / 記述行為 / 清代中国語 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は資料の精読に重点をおき、『清代档案資料選編』に収録された雍正期供述資料を読み進めた。供述部分の記述が、明らかに文言文ではなく口語体で記述されているものに関しては、「口供」という語によって導かれていることが多いとは言えるが、必ずしも全ての口語体記述が「口供」という語で導かれているとは限らないようであるということが確認できた。口語体記述の前に用いられている語を整理することによって、口語体記述を導く語として用いられている具体的な語(そうした語は動詞が担うと考えられる)の種類、また文言文で記述される場合の用語との相違の有無が、明らかになる可能性があり、供述文書において「話された言葉」として記述された箇所とそれ以外とを区別する基準の手がかりを得ることができるため、本研究にとっては必要な作業であり重要な意義をもつ。 加えて、話し言葉を記述するという行為を多面的に考察することを目指し、研究対象とする清代と同時代の朝鮮及び日本における中国語会話資料を見直す作業を行なった。対象とした資料は、中国本土以外の資料が、18世紀から19世紀において朝鮮半島の辺境の防衛を司った部署である備辺司の記録『備辺司謄録』の朝鮮側通訳と中国側漂流民による漂着調書、18世紀前半に日本の岡島冠山によって編纂、著された『唐話纂要』の問答記録、18世紀後半以降に日本人中国語通訳によって編纂された『訳家必備』、1900年前後の北京の言葉を反映していると考えられる『北京官話全編』であり、中国本土資料である清代の档案資料の言語との比較調査を行なった。 調査結果は、所属先である関西大学出版部より刊行された東西学術研究所研究叢刊58『近世東アジアにおける口頭中国語文の研究ー中国・朝鮮・日本』(2019年3月31日刊)にまとめた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
資料の読解に想像以上の時間を要したことによる。档案資料の読解力の不足と、歴史的な知識の不足が、根本的な理由であると認識している。 また、年度内に所属機関から出版された著書に時間を費やさねばらならなかったことも大きな理由である。著書の内容は、東アジアにおける中国語口語文を扱ったものであり、本研究課題と密接に関係しており、研究を見直すことができたため有意義ではあったが、研究の遅れを招いたことは否めない。
|
Strategy for Future Research Activity |
現時点において、公開されている档案資料には限りがあり、入手できる資料はさらに限られているということ、また、資料の読解に時間を要するということの2点を踏まえ、歴史的ではなく共時的なアプローチに重点を置きたい。対象とする時期はすでに研究実績のある雍正期に限定し、内容はヨーロッパの機関にも所蔵されており比較調査が可能な天主教档案資料に限定し、研究の基礎を築きたいと考えている。
|