2017 Fiscal Year Research-status Report
旧ベトナム共和国のベトナム語・1975年を境とする連続と非連続
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17K02763
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Research Institution | Ritsumeikan Asia Pacific University |
Principal Investigator |
田原 洋樹 立命館アジア太平洋大学, アジア太平洋学部, 教授 (60331138)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 旧ベトナム共和国 / 母語教育 / エスニックメディア |
Outline of Annual Research Achievements |
1.平成29年度は辞書刊行、カリフォルニア在住の知識人に対する聞き取り調査、シンポジウムでの基調講演を行った。 2.本研究の準備作業の一環で収集してきた、旧ベトナム共和国で使用され、現在のベトナム社会主義共和国では一般的には使用されていない語彙リストの一部を、『パスポート初級ベトナム語辞典』(白水社刊)の見出し語や解説に盛り込むことができた。これは単なる懐古趣味や復古主義ではなく、43年前まで存在した国家で日常的に使用されていた語彙の記録と保存の観点から、さらに戦後の言語状況との、いわば新旧ベトナム語の対照研究の素材としての意味を持つ。本国外に200万人以上いる在外ベトナム人とのコミュニケーションや、文献調査において利用価値が高い語群である。 3.在米ベトナム系住民の文芸団体Nhan Anh Tan Van va Tieng Thoi Gianがカリフォルニア州立大学ロングビーチ校において開催したシンポジウム『言語と文化による世代間連携』において基調講演者を務めた。シンポジウムにおける演題は「旧ベトナム共和国のベトナム語 ~我が家のベトナム語事情」であった。本シンポジウムにはカリフォルニア州南部で文芸活動を行っているベトナム系作家、歌手、画家および研究者が参加し、外国人の参加者もいた。また、アジア系住民の母語教育政策をホワイトハウスで担当している行政官も講演を行った。当日の様子は現地テレビやベトナム語日刊紙などの、いわゆるエスニックメディアで大きく取り上げられ、研究に対する認知を高めることもできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題で最も重視していることがらのひとつである『研究成果の還元』の点において、インパクトある途中報告を実施することができた。これにより、研究に興味を示したり、協力を申し出てくる旧ベトナム共和国の人々が増えた。協力者の確保は深刻な課題であったので、この壁が乗り越えられるのは今後の研究活動の成否に直結する。
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Strategy for Future Research Activity |
1.当初予定通り、ベトナム本国内での調査と、在外ベトナム人コミュニティにおける調査(バンコクおよびカリフォルニア南部)を実施する。 2.ベトナム本国においては、1975年以前から言語学研究に従事している専門家との意見交換を予定している。在外ベトナム人コミュニティが保存しているベトナム語についての、本国内での認識や認知に関する調査を行う。 3.カリフォルニア南部では、異世代間の言語継承をテーマにした意見交換を実施し、現地メディアに出演して、研究成果の一部を公表する予定である。
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