2019 Fiscal Year Annual Research Report
旧ベトナム共和国のベトナム語・1975年を境とする連続と非連続
Project/Area Number |
17K02763
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Research Institution | Ritsumeikan Asia Pacific University |
Principal Investigator |
田原 洋樹 立命館アジア太平洋大学, アジア太平洋学部, 教授 (60331138)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 旧ベトナム共和国 / ベトナム語 / 母語教育 / エスニックメディア |
Outline of Annual Research Achievements |
旧ベトナム共和国のベトナム語と、現在のベトナム社会主義共和国のいわゆる「南部方言」は同一のものではない、という学問的気づきに端緒を発した本研究の最終年度であった。 本研究の準備作業を進めながら用意してきた、旧ベトナム共和国で使用され、現在のベトナム社会主義共和国では一般的には使用されていない語彙リストの一部 を『パスポート初級ベトナム語辞典』(白水社刊)の見出し語や解説に使用したが、その後の研究の進展に合わせて、内容の見直しおよび修正を行った。これは次回の増刷より反映される予定である。 研究期間全体では、南カリフォルニアのベトナム系住民が運営している文芸団体Nhan van nghe thuat Tieng thoi gian(旧Nhan Anh Tan Van va Tieng thoi gian)の協力により、多くのインフォーマントから75年以前の言語動態に関する情報を得ることができた。特に、仏教、カトリックなどの宗教人、外交官や政府高官、教師、芸術家など、言語研究についての専門家のみならず、「言葉の使い手」あるいは「表現者」に幅広く接することができたのが、本研究の進展に大きく役立った。また、研究成果の現地還元を重視する点では、カリフォルニア大学ロサンゼルス校やカリフォルニア州立大学ロングビーチ校において、ベトナム系子女の学生に対して研究内容を講演したり、ゲストスピーカーとして講話する機会があった。 この研究を推進していく過程で、いわゆるボレロと呼ばれるベトナム音楽が持つ、詩的オラリティや、南部ベトナム人のアイデンティティに新たな着想を得た。本研究との関連では、ボレロの音楽家(多くの楽曲は作詞、作曲が同一人物)やアメリカ在住の歌手、さらにベトナム国内でボレロを歌う歌手と意見交換することができ、この活動は新聞やテレビに取り上げられた。
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