2017 Fiscal Year Research-status Report
A study of discouse behaviors invoking phase transitions in discussion
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17K02766
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
水上 悦雄 国立研究開発法人情報通信研究機構, 先進的音声翻訳研究開発推進センター先進的音声技術研究室, 主任研究員 (30327316)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 話し合いの相 / 話し合いの相転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
H29年度は、分析対象とする話し合いのデータ整備、「相」および「相転移」を規定するための予備的分析を行った。話し合いのデータは、計画では研究代表者が過去に収録したデータを使用する予定であったが、「相転移」が見やすいデータとしては、より議論の展開が多様なデータが望ましいと判断し、協力研究者である関西学院大学森本郁代氏と相談の上、氏から話し合いデータを提供いただいた(実名を公表しない、本人が特定されない配慮をすることを前提に、映像、発話内容の研究利用への同意書取得済。)。このうちの一部の書き起こしを行い、分析に必要な整備を行った。整理したデータの中から、特に議論が紛糾したり、膠着したり、停滞する場面がみられるようなデータとして、日本人大学生4名による話し合いデータに対象を絞り、四人のうち二人が各々の主張を戦わせる「対立相」、およびその後の中間的な相を経て、四人が一緒に議論の展開に向けて協力する「協調相」に移行する移行期に着目し、その間に行われている参与者の言語/非言語行為を分析し、これを認知科学会分科会間合い研究会にて発表した。さらに、森本氏から提供を受けたデータで中国人留学生、韓国人留学生、日本人学生による異なる二つの話し合いデータを対象として、同様に相が移行するような場面を抽出して、分析を行った。そのうちの一つは、やはり「対立相」からはじまりその後「停滞相」に移行する場面であり、国籍の異なる参与者であるという成員性の観点から、また、相移行期にみられる「笑い」や「同意/不同意表現」が如何に相移行に寄与しているのか、について分析を行った。もう一つの場面は、一人の参与者の主張が次第にエスカレートしていく「増長相」が、他参与者の一言によって緩和されて、相転移を起こす場面に着目して、同様の観点からの分析を行い、人工知能学会言語・音声理解と対話処理研究会にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画では、H29年度は、以下の三つの研究フェーズを実施する予定であった。(ア)話し合いデータの整理、(イ)調査研究、(ウ)相分類検討と分類。これに対して、(ア)については、本研究を推進するために差し当たり必要な量のデータの整理はできた。ただし、今後研究を進めるうえで、より多くのデータが必要と判断されれば、対象を広げて整備を行う可能性がある。(イ)については、十分とはいえないまでも、H29年度研究実施に必要な調査は行った。特に、会話分析の知見を導入するための調査研究は論文収集や関連テーマの学会や研究会への参加・聴講、および関連研究者との議論を通じて推進することができた。(ウ)については、話し合い全般に見られる「相」を規定できたわけではなく、あくまで「相転移」を視野に入れた、その前後の相をいくつか例示できたに過ぎないが、二件の発表に対する、聴講者との質疑からも、相の定義方法の方針、および一意に定義できるような相というよりも、レベルの異なる重層的なものとして捉えることで、より話し合いの相の性質をとらえることができそうである点について、今後の研究推進に対する重要な知見が得られたことは大きな収穫である。よって、必ずしも計画通りではなかったが、本研究課題を進めるうえで必要な微調整を行い、次年度に繋がる成果が得られたと考えており、概ね順調という自己評価をした。
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度の研究成果を踏まえて、以降の研究を以下のように推進する。提案時計画ではH30年度は(エ)行為特徴量の検討、(オ)行為特徴量の抽出、(カ)相関分析、H31年度は(キ)支援ツールの開発、(ク)話し合いの相の自動認識の検討をする予定であった。基本的にはこの計画を維持する。特に、H29年度の予備的分析結果から、(エ)について、いくつかの特徴量候補(笑いや同意/不同意表現など)は見つかっているが、更なる分析を進めることで、候補を絞りだしていき、対象話し合いデータから抽出を試みる。必要に応じて、対象データを拡張し、あわせて、「相」の定義を明確にするとともに、可能な限り頑健なアノテーションの仕様をとりまとめ、相境界と特徴量の関係性を分析するに必要なデータを作成し、相関分析を行う予定である。H31年度は、H30年度の研究成果を踏まえて柔軟に計画を見直すとともに、最終的な研究成果の創出に向けて取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
データ整備費用が、計画時より安価に済んだが、次年度にも追加でデータ整備が必要となる可能性があり、これを用いて実施する予定である。
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