2021 Fiscal Year Research-status Report
A study of discouse behaviors invoking phase transitions in discussion
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17K02766
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
水上 悦雄 国立研究開発法人情報通信研究機構, ユニバーサルコミュニケーション研究所先進的音声翻訳研究開発推進センター, 主任研究技術員 (30327316)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 話し合いの相 / 話し合いの相転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近年課題解決や意思決定を目的として公的な場にも実践的に導入されてきている話し合いを対象とし、1)話し合いのプロセスを、参与者の言語・非言語情報からフェーズ(相)に分類する手法、2)停滞する場にブレークスルーを与える、あるいは、活発な議論に水を差すなどの、フェーズに転換をもたらす参与者の言語行動の特徴を明らかにし、その知見から3)話し合いを円滑に進めるための支援法やツールを構築することを目的としている。 この目的を達成するために、H29年度は既存話し合いデータを使って予備的分析を行い、いくつかの「相」の種類を特定するとともに、相転移をもたらすいくつかの相互行為の特徴を抽出し、H30年度以降も、話し合いの実践場面(クロスセクターの人々のまちづくりに関する話し合い実践や、自治体の都市計画に関する地域住民による話し合い等)の収録を継続し、それらを観察、分析することで、話し合いの相転移に関連の深い話し合いの場や個々の話し合い参加者の変化と、話し合い参加者の関係性の醸成が強く関係していること、個々の参加者の変化(変容)を、成人の学習の観点から分析し直した。 R3年度は、市民意識の変化と「相」の関係性について考察した。その結果、「増長相」(発言に攻撃的な表現が増え、負の感情がエスカレートする場面)が支配的になることが、市民性の醸成には疎外となる可能性があること、「増長相」等から別の「相」に転移するきっかけの一つが「笑い」による場の緩和であること、参加者の中にファシリテータの役割を担うような者が出現する場合、「相転移」に貢献し得ること、話し合いが促進する一方で、それが必ずしも市民性の醸成につながるとは限らないこと、などの知見が得られた。しかしながら、分析や考察が十分にできているとは言えず、体系的な構造化や論考にまでには至っておらず、研究期間を再延長することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
R3年度は、R2年度までの進捗の遅れを取り戻すべく、「相」および、相の生成に関わる行為特徴量のアノテーション仕様を明確化し、追加した話し合いデータに対してこれらのアノテーションを行う予定であったが、成人の学習や、市民性の醸成と、社会的話し合い実践場面の関係性の分析に焦点を移すことで、「相」の観点からの分析が十分にできなかった。ただし、この異なるアプローチが、翻って「相」と、参加者の行為や「意識」との関係性を考察するのに役立つことがわかり、研究の手法としては遠回りをしたことは否定できないが、結果的により広い視点から、「相」を考察することができるようになったと言える。また、R2年度に引き続き、新型コロナウィルス感染症拡大の影響により、本来業務のほとんどを在宅で行わなくてはならなかったことなどから、負担が増大し、当該科研費研究にかける時間が十分に確保できなかった。そのため、再度の研究期間の延長を申請した。
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度~R3年度の5年間で、研究協力者の助力もあり、一個人研究としては得難い、実験的な談話ではない、生の成人の話し合い実践データを数多く得られたことは重要である。特に、R2年度、R3年度には、実際の社会的な課題解決に関わる市民同士の話し合いデータを分析することができ、R1年度に得られた「成人の学習」あるいは「市民性の醸成/獲得」の観点とともに、より多角的に(プラスの側面、マイナスの側面の双方向に)話し合いの「相」について捉えることができたことは非常に有益であった。再延長した残された一年で、当初計画の全てを達成することは難しいかもしれないが、5年間で得られた知見を活かし、話し合いの「相」の変化の本質を、話し合いの個々の参加者の相互行為の変化の観点から分析し、話し合いデータ間、参加者間で比較することで、体系的に考察を深めることで、明らかにし、学術論文に投稿、あるいは学術会議にて発表したいと考えている。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の中、研究進捗に影響があっただけでなく、参加予定の学会、研究会が全てオンラインとなったため。当該助成金は、データ整備用HDD購入費用として5万円、対面での学会、研究会が復活することを前提に、旅費、学会参加費として10万円(国内二回)、その他通信費や論文別刷り費用、雑費として、4万2千円強を充てることとする。
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Research Products
(1 results)