2018 Fiscal Year Research-status Report
南海トラフ地震に対応した外国人住民への「やさしい日本語」適応の研究
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17K02767
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
佐藤 和之 弘前大学, 人文社会科学部, 教授 (40133912)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | やさしい日本語 / 外国人住民 / 外国人観光客 / 地震 / 津波 / 避難誘導 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本で大規模な災害が起きたとき、外国人住民の避難誘導は外国語より日本語能力3級(N4)程度の語彙と文法を用いた「やさしい日本語」で知らせた方が、漢字圏、非漢字圏の出身に関わらず、いずれの外国人住民にも伝わることを実証してきた。行政などの伝える側にとっては、翻訳作業の手間や誤訳の危険を避けられることから、新しい情報を迅速に伝えることもできた。 そこで2018年度はとくに、災害発災直後や災害下で外国人に伝えるべき「やさしい日本語」の表現を行政やマスコミ、ボランティアといった団体の職員が容易に作れ、伝えられるようにするための教材資源と避難所などの施設で伝える「やさしい日本語」の情報資源を整備した。これら資源は、2018年6月に起きた大阪北部地震と同年9月の北海道胆振東部地震での、外国人住民や観光客への課題を考慮した解決策で、『これさえあれば!!「やさしい日本語」作り方ガイドブックー掲示物・放送・SNSで伝えるー』と『これさえあれば!!「やさしい日本語」図鑑ー掲示物の活用ー』の2編にして社会言語学研究室ホームページ上で公開した。 さらに2018年度に重点的に取り組んだ課題として、日本語教育を受けることなく、生活者として日本での言語生活を営む外国人労働者、しかも日本に住んで1年くらいの外国人に「やさしい日本語」を使った避難情報が誤解なく、また速やかに伝わるかについてである。コミュニティーFMや防災無線、市区町村役場の広報車からの避難呼びかけを、外国人住民の8割以上が理解する「やさしい日本語」表現にする表現作りと、そういった「やさしい日本語」表現を、災害時に外国人対応する行政やボランティア団体職員が作れるようになる教材作りに取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2019年3月までの研究の進捗は、研究計画立案時より進展していて、新たな展開にまで至った。 その理由として、これまでの「やさしい日本語」を使った情報伝達の効果と普及によって、2020年の東京オリンピック、パラリンピックや外国人観光客4000万人時代の避難誘導表現として「やさしい日本語」を適応させたいことを、国や県、市といった行政機関から求められるようになったことによる。 もともと「やさしい日本語」は日本に住む外国人住民への災害時情報を提供するためのもので、日本語を理解しない外国人観光客は考慮に入れてこなかった。しかし研究開始から25年が過ぎ、社会での多言語対応として「やさしい日本語」が普及したことから、さらに「やさしい日本語」を活用した外国人観光客を安全に避難誘導させる術が求められ、その仕組み作りをも研究課題に取り入れたことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題による今期3カ年の「やさしい日本語」研究は、南海トラフ地震や首都直下地震での言語的減災活動に適応させられるよう、言語研究者だけでなく地域社会で外国人支援に携わるキーパーソンたちとの協働により実施している。 2017年度(初年度)には当初の研究課題通り、大規模災害発生時の外国人住民の避難誘導を円滑にするための「やさしい日本語」の表現作りを行った。2018年度は外国人住民に避難誘導の「やさしい日本語」表現をコミュニティーFMや消防、市町村役場、ボランティア団体の職員が音声で円滑に伝えられるようするマニュアル作りに取り組み、2年目の研究成果として2019年3月に社会言語学ホームページでそれらを公開した。 研究最終年度の2019年4月からは、上述「現在までの進捗状況」で記したように、訪日外国人4000万人時代を目前に、南海トラフ地震や首都直下地震発生時の避難誘導表現として外国人観光客をも安全に避難させられるよう、「やさしい日本語」を使った誘導の方法が強く求められている。日本語を理解できない外国人観光客を安全に避難させる「やさしい日本語」を活用した言語学的な仕組み作りと、これと軌を一にしたInformation and Communication Technology(ICT)による多言語化の際の元文として使える「やさしい日本語」の広がりが求められており、それら社会的要請に配慮した研究の展開を進めている。
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Causes of Carryover |
先述「進捗状況」欄に記したように、2020年の東京オリンピック、パラリンピックや外国人観光客4000万人時代の避難誘導表現として「やさしい日本語」を適応させたいことを、国や県、市といった行政機関から求められるようになったことで、その仕組み作りと安全性の検証実験を研究課題に取り入れた研究計画を最終年度(2019年度)に実施予定でいる。 この「やさしい日本語」を使って外国人観光客を避難させる誘導の安全性と有効性を確認する検証実験に伴う諸経費が必要なため最終年度に計上した。
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Research Products
(4 results)