2017 Fiscal Year Research-status Report
発音の動態観測に基づく日本語長母音の音韻論ならびに音声学的解釈
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17K02769
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
白勢 彩子 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (00391988)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北村 達也 甲南大学, 知能情報学部, 教授 (60293594)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 日本語音声 / モーラリズム / 調音運動の計測 / 磁気センサシステム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,従来,直接的に観察されることのなかった日本語長母音の発声に焦点を当て,調音運動を記録・観察できる,非侵襲性の磁気式リアルタイム三次元運動計測システムを用いて,モーラリズムを実証的に検討する。検討に当たっては,日本語母語話者の成人および児童,日本語を母語としない言語話者を対象にデータを収集することを計画しており,本年度は日本語母語話者の成人の発話データを収集した。実験参加者は計10名,男女同数で,実験参加者には謝金を支払った。 発声リストは,/kabu/(下部)--/kaRbu/(カーブ),/siru/(汁)--/siRru/(/R/は長音拍を示す)のような実在語の複数対と,それらを模した無意味音列(例:/kaka/--/kaRka/)の複数対とした。磁気式のリアルタイム三次元運動計測システム(Northern Digital Inc. Wave speech research system)を利用して,口唇,下顎,舌上等に貼りつけたセンサの,発話中の動きを追跡して計測・記録した。実験では一人当たり6センサを装着し,センサは使い捨てのものであることから,消耗品として購入した。 計測システムはアドバンストシステムズ社より借用し,実験支援者を依頼して実験を遂行した。装置利用料,実験支援料を支出した。実験の円滑な進行のため,実験補助者を雇用した。 記録された音声の音響信号と,上述の実験で得られた口唇および舌の運動の情報との対応を取り,口唇の運動と音響情報から口腔内の運動を正確に推定するプログラムを作製した。Wave 解析用のソフトウェアの整備に着手した。 児童に対し,口腔内,口唇等センサの装着は難しいことから,口唇の運動を動画撮影してデータを得ることを計画しており,収録機材の開発も進め,試作品を作製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計測機器は高額のため,磁気式のリアルタイム三次元運動計測システム(Northern Digital Inc. Wave speech research system)を,アドバンストシステムズ社より借用して使用している。収録用のプログラム(ソフトウェア)が必要で,Northern Digital社で開発したものが付属する。ソフトウェアのバージョンアップに伴い,重大な欠陥が発生していることがすべての実験の終了後に判明した。データが正確に収録されておらず,今回のような精緻な解析に適応しない。実験をやり直す必要があり,進捗に遅れが生じている。 ただし,31年度実施予定の児童対象の実験で使用する機材およびプログラムの開発を先取りして進めており,全体から見ると大幅な遅れはない。
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Strategy for Future Research Activity |
収録プログラムの欠陥により,実験をやり直す必要があるが,機材のレンタル料および実験支援者の派遣料はレンタル会社のアドバンストシステムズ社が負担することとなっており,研究費から支出する必要はない。夏前に実験を実施する予定である。データ解析についても補助員を雇用する予定であったが,次年度に繰り越して対応する。 児童対象の実験機材類が30年度中に完成する予定で,計画より早く実験を開始できるよう調整していきたい。
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Causes of Carryover |
実験支援者の転居に伴い,旅費の負担が軽減した。これをデータ解析のアルバイトに当てようとしたところ,データの収録プログラムの欠陥のために解析が翌年度となった。そこで,次年度使用額としてデータの解析補助に当てる。
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