2020 Fiscal Year Annual Research Report
Creation of the transcript data on Gifu dialects recorded in 1960s and its linquistic analysis
Project/Area Number |
17K02771
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
山田 敏弘 岐阜大学, 教育学部, 教授 (90298315)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 岐阜県方言 / 談話資料 / 昭和40年代 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、申請者の岐阜県方言研究に関する集大成とも言うべき研究として、方言談話資料の構築を目的として計画され、昭和40年代に採録された岐阜県図書館所蔵の音声資料『飛騨・美濃古老の思い出話』の書き起こし(文字化作業)をおこなうことを主目的として4年間取り組んだものである。結果としては、当該音声資料およそ20時間ほどのデータを書き起こすところまで達成でき、岐阜県方言の談話資料データの充実を図ることができた。 このデータを活用した方言談話の分析については、論文として、その資料的価値を論じた単著論文を2本(いずれも査読無し)発表し、未刊行ではあるが、国際誌への寄稿論文における活用、また、国際学会での基調講演における話題として取り上げるなど、本科研による方言談話に関するデータは、大いに活用された。 一方、古い資料の著作権処理にも取り組んだものの、古い電話帳を活用するなどしても50年前の原話者にたどり着くことは容易でなく、音声資料の全面公開については諦めざるを得ないこととなった。それでも、言語的特徴のある部分を引用する形で活用し、多くの新しい知見を得ることができた。たとえば、岐阜県は関西方言と同様に、条件を表す接続表現として「タラ」が多用されると考えられてきたが、実際には「ト」が多く用いられており、東京方言に近い特徴をもつことが分かった。また、否定辞としても「ヘン」を用いる言い方が、昭和40年代にも多く用いられており、このほとんどが、強意的意味を含まないことが確認され、国立国語研究所編(1991)『方言文法全国地図 第2集』の否定辞に関する調査で、岐阜県には「ヘン」あるいはその前身の「セン」が用いられているという報告がないことが、当時の言語実態に合わないことも突き止めた。 最初目論んだ100時間超のデータの書き起こしには及ばなかったが、多くの新しい知見を得ることができた研究となった。
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