2020 Fiscal Year Research-status Report
明治初期における聖書翻訳と日本語意識の形成に関する研究
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17K02772
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
齋藤 文俊 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (90205675)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 日本語史 / 聖書翻訳 / 漢文訓読 / 日本語意識 / 近代語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、明治初期という、漢文訓読体が優勢であった時代に、「日本語」がどのように意識されていたのかを明らかにするため、漢訳聖書の影響をうけて翻訳された複数の「聖書」を資料としてとりあげ、漢文訓読語法や当時の俗語などの「やさしい日本語」がどのようにその中に含まれているのかを調査していく。また、同じように漢訳聖書の影響を受けた、近代の韓国(朝鮮)語訳聖書の場合と比較考察していくことにより、多角的に明治初期における「日本語意識」の形成過程を明らかにしていくことを目指している。 4年目である令和2年度においては、本来ならば最終年度のまとめを行う予定であったが、新型コロナウィルス感染症の影響のため、最終的な国内・国外での調査が不可能となったことにより、インターネットによる文献調査の作業およびデータベース作成準備を行った。具体的には、昨年度に引き続き、漢文訓読体で翻訳された『欧洲奇事花柳春話』と、和文体で書かれた『通俗花柳春話』を対照させ、その中で用いられている漢文訓読語法を調査することにより、両者に見られる日本語意識についての考察を行った。明治初期には、このように、同一の内容を漢文訓読体で記したものと、「通俗」という角書を付して、易しい文体で記した小説類が複数存在するので、それらを調査することにより、明治初期の日本語意識を解明していくことが可能になると思われる。また、全体的なまとめの作業の準備として、「訓点資料研究に期待すること「近世漢文訓読研究から」」(『訓点語と訓点資料』第146輯、2021(令和3)年3月、pp.123-129)という報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
4年目においては、本来最終年度のまとめを行う予定であったが、新型コロナウィルス感染症の影響で、大幅に予定が遅れ、3年目にはできなかった、日本国内において本格的な資料の収集と整理、および、データベース入力作業を行う予定に変更した。特に資料調査は、本研究にとって一番重要なものであり、東京大学附属図書館・国立国会図書館、また各地の公共図書館などを調査し、資料を収集する予定であったが、新型コロナウィルス感染症の影響が深刻となり、結局その調査が行えなくなってしまった。調査の一部はインターネットを使用することで代用できたが、やはり現物を確認することは絶対に必要である。また、その調査に基づくデーターベース入力作業にも遅れが生じている。補助事業期間の延長はおこなったが、今年度前半も昨年度末と同様の状況であるので、研究計画を随時見直しながら、少しでも遅れを取り戻せるよう、研究を遂行して行く予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
補助事業期間の延長により、研究期間最終年度となる今年度は、やはり、収集した資料の確認、および、研究成果の発表を予定しているが、新型コロナウィルス感染症の影響により、昨年度同様、研究計画を変更する必要が生じている。基本的には、状況が許せば、日本国内においての資料の収集と整理、さらに最終的な確認作業を行いたい。この資料調査(収集、確認作業)については、東京大学附属図書館・国立国会図書館、また各地の公共図書館などを調査する予定であるが、ただし、これについては、状況に応じて、インターネットなどにおける資料収集に留まる可能性もある。また、収集・整理した資料について、それぞれの資料に用いられた語彙・語法が一覧できるようなデータベース入力作業を行う。
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Causes of Carryover |
(理由) 本研究は、当初令和2年度までの継続した研究であったが、新型コロナウィルスの影響で資料調査などが行えず、補助事業期間の延長を申請した。そこで、今年度においても、下記に示すような費用を必要とするため、研究費を繰り越すこととした。 (使用計画) 本研究は、1.国内での資料調査、2.データベースの作成、3.研究会の開催、の三点が中心となるものである。 最終年度となる本年度は、昨年度に行えなかった、国内・国外での資料調査を事情が許せば行う予定である。そのため、国内調査・研究旅費、および文献 複写費を使用する。また、データベースの作成についても、資料調査により得られた資料の入力作業のために用いるドキュメントスキャナの購入費、およびデータベース作成補助謝金を使用する。
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Research Products
(2 results)