2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K02783
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Research Institution | Kawamura Gakuen Woman's University |
Principal Investigator |
長崎 靖子 川村学園女子大学, 文学部, 教授 (60419794)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 三馬の識語 / センボウ / 国学 / 賀茂真淵 / 冠辞考 / 唐話 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、三馬蔵書印書の中で、漏れていた内容の再調査を中心に行った。その中で、新たに白鹿酒造記念博物館所蔵の三馬蔵書印書1冊を発見した。この書は国文学研究資料館にマイクロで保存されているため、マイクロの調査を行った。これにより、三馬蔵書印書は259冊となった。 また、今年度は昨年度より行っている、三馬蔵書印書が三馬の言語描写に影響を与えた具体的な内容に関する論考を進め、その成果として、まず「式亭三馬の言語描写二―三馬の蔵書に見るセンボウの記述から―」(『川村学園女子大学大学院研究年報』第8号 2019.1)を発表した。本稿は昨年度発表した「式亭三馬の言語描写―センボウを資料として―」の続編にあたるもので、今回は三馬蔵書印書の中でセンボウに関する記述のある書『浪花色八卦』『浪花花街今々八卦』(いずれも東京都立中央図書館所蔵本)を取り上げ、三馬のセンボウに対する知識の高さを確認するとともに、三馬の言語描写に対する真摯な姿勢を述べた。また、三馬蔵書印書『つれづれ草拾遺』(名古屋大学附属図書館所蔵本)に記された三馬の識語及び三馬の著作から、「式亭三馬の著作に見る国学の趣向」(『川村学園女子大学研究紀要』第30巻第1号 2019.3)を執筆し、三馬の国学に対する深い学びを示した。さらに、今年度の研究の推進方策として掲げた、三馬の著作に使用される唐話に関し考察を進めた。この成果は、来年度10月に発表予定である。 これに加え、三馬蔵書印書259冊の整理し、三馬の蔵書目録作成を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の予定の中で、大東急記念文庫所蔵の三馬蔵書印書に記された識語の再調査並びに関東圏2件の三馬蔵書印書の調査は終わっていない。しかし、現在確認できる三馬蔵書印書の調査と整理に関しては概ねまとめられており、現在どのような形の蔵書目録にするかを検討する段階にある。 また、三馬蔵書印書と三馬の言語描写に関する具体的な論考も2件発表し、さらに来年度刊行予定の論考1件は校正を待っている状況である。従って今年度、概ね予定通りに進められたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は本科研の最終年度であるため、計画として掲げた三馬の蔵書目録作成を中心に進める。昨年度調査しきれなかった大東急記念文庫所蔵の三馬蔵書印書の識語に関しては、今年度調査を終え三馬自筆の仮名の用字法並びに当時の仮名の用字法の資料の一端となるよう仮名字体をまとめ、論文等で発表を行う予定である。また、三馬蔵書印書の具体的な内容から、三馬の言語描写への影響を探る論考も合わせて発表したい。 さらに、三馬蔵書印書の調査を進める中で、江戸時代の書肆達摩屋五一が三馬所蔵の書を多く収集していることを知った。達摩屋五一は自筆本『式亭雑記』を旧蔵していたことがあり、『式亭雑記』の書写を行った人物として知られる。そこで、三馬に関連する人物として、達摩屋五一の蔵書も合わせて調査していきたいと考えている。
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Research Products
(2 results)