2019 Fiscal Year Research-status Report
The historical study of collocation composition and compound expression form of classcal Japanese
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17K02785
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
安部 清哉 学習院大学, 文学部, 教授 (80184216)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 連語 / コロケーション / 複合辞 / 漢語 / 日本語学 / 徒然草 / 語基 |
Outline of Annual Research Achievements |
1:中世資料でありかつ中古語を擬古文として含んでいる『徒然草』を取り上げ、連語に着目した分析方法の有効性を検討した。作成した「古典語機能語一覧」を活用し、『徒然草』の複数の連語表現の出現章段と個々の用法を分析し(論文公表)、以下の◆記載のような成果を得た。それらからは、中古語と中世以降の日本語比較には連語に着目する方法が有効であることが裏付けられた。具体的成果としては、◆文末および文節末に現れるある種の連語表現は『徒然草』の第2部(第三十三章段以降)に偏在する傾向が認められた。◆中世的な連語的表現は第1部ではなく特に第2部の文体特徴を成す。◆一方中古的な語彙・語法(中古で盛んであった係り助詞や中古的語彙「あはれ」他)を含む連語的表現は『徒然草』の第1部に偏在する傾向がある。◆それらは『枕草子』の語法とも一致ないし類似する傾向が顕著である。◆中古的連語表現は第1部の文体特徴を形づくっている。◆連語と共起する語句も視野にしれて分析することが有効である。これらの諸点からは、『徒然草』の所謂擬古文的表現は成立時期が早いとされる第1部に偏在しており、連語の点から分析することで資料として第1部と第2部との相違が従来の研究より明確になり、区別して扱う必要性が明確に示せた。 2:鈴木泰編『現古対照文法辞典』の元データを改編して作成した『現古機能語対照表』を利用し、古典語の機能語語形を「機能語」の機能別分類の番号順にしたがって配列し、該当する現代語機能語とも対照できるようにした一覧表を作成した。 3:幕末・近代の新漢語の語基用法における連語的複合語形成の増大に着目し、そのような新漢語語基の収集と近代漢語資料の研究を進めた。近代に膨大な新漢語を生み出した漢字語基の用法も、ある意味で新たな連語的機能を発展させた語構成単位とみなすことが出来ると考え、それらに焦点を当てた調査研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
○2019年5月に身内に不幸があり、直前の2年間程は介護等に時間がとられて、研究遂行の上で時間的な不足が生じたため。 ○研究計画の遂行過程で、申請計画とは別に、よりテーマに則した有効な結果が得られる着眼点と調査対象を見出せた。その新たな調査対象に関しても、一定の良いの成果を得てから 報告書に加えられるようさらなる追加作業を行いたいため。
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Strategy for Future Research Activity |
①『現古機能語対照表』の連語一覧作成によって従来の単位での複合辞・連語形式は把握出来たものの、通時的変化を見るにはなお不十分である。特に中世以降の連語の変化(形式の増加、長単位化、共起要素の多様化、複雑化)を十分に掌握する必要があり、次のような新観点からのデータ収集を継続する。〇連語を収集する位置を接続機能(節末・文末)だけでなく引用部等(会話・心内話)他にも拡大する。〇単純な連語以外にも副詞や少し位置が離れる共起語も視野に入れて収集する。〇『徒然草』第1部第2部での連語表現の相違が、中古と中世以降の日本語の相違を見出す上で有効であったので第1部第2部での連語形式を悉皆的に収集し分析する。〇『徒然草』の連語表現と説話集(特に和文系)の連語表現には一部類似が認められたので和文系説話集からも類似連語表現を収集する。 2)近代理科学教科書を資料として用法を拡大させた新漢語語基とその熟語を継続して収集していく。その際、近代新漢語研究も漢字の連語的単位の質的変化と捉え直すこと必要があり、その観点から用例収集と分析を拡大する。〇近代新漢語増大は個々の熟語の単なる増加ではなく、漢語の縮約や略語化現象を内包した語基の意味変化により複合語形成力、即ち連語形成力の質的変化が生じたとみなす必要がある。〇その変化により接辞的用法増加以外だけでなく詞的性格を維持したまま接詞的連語性複合漢語が増大したと捉えられる(例、「特急電車」(←「特」別「急」行・「電」動「車」)、「複線化」(←「複」式・「線」路化)。そのようないわば近代連語的複合構成の漢語形態を多く収集し、そこに現れる語基用法の出現時期、誕生背景(出自)、形態類型、使用頻度の計量を行う予定である。
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Causes of Carryover |
○2019年5月に身内に不幸があり、研究進行が遅延して未遂行作業が残ったため。○また、研究計画の遂行過程で、申請計画とは別に、よりテーマに則した有効な結果が得られる着眼点と調査対象を見出せた。その新たな調査対象に関しても、一定の良いの成果を得てから 報告書に加えられるようさらなる追加作業を行いたいため。 〇追加作業のためのアルバイト費用およびその資料や成果を校正し印刷する経費にあてるため。
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