2018 Fiscal Year Research-status Report
日本の近代化に寄与した『福恵全書』における付訓語に関する基礎的研究
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17K02788
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Research Institution | Seisen University. |
Principal Investigator |
荒尾 禎秀 清泉女子大学, 付置研究所, 客員所員 (20014813)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 福恵全書 / 漢字語 / 振仮名 / 近代日本漢語 |
Outline of Annual Research Achievements |
『福恵全書』の振仮名付きの漢語をデータベース化する作業は,昨年度に引き続き3文字以上の漢字語の多くについて内部を区切り空見出しを立てた。全項目3万5千を一定の順序で排列した。また異体字などに関しての検索補助のための使用漢字一覧表を作成した。漢字語のデータベースは未調整の部分があるが一応の完成をみた。来年度はこのデータベースを紙媒体の索引として運用できるように改編する予定である。 振仮名に対応する漢字列の判定に疑問がある箇所の確認修正を中国研究者の協力を得て行ったが、一通りの確認修正ができた。来年度はなお残る疑問点を処理する。 書誌調査は一部の図書館の蔵書について実施し、刊行に使われている板木は一種類だが、大別すると2類3種類の刊本があることがはっきりした。 『福恵全書』が近代日本語、あるいは日本の近代化に果たした役割については、『福恵全書』と『福恵全書和解』を例にして、調査研究を行った。『福恵全書和解』は『福恵全書』刑名部を漢字片仮名交じり文に翻訳したものであるが、この資料を分析することにより、中国の新しい漢字語が和刻本での左振仮名の持つ機能により日本近代漢語が生成された可能性があることを論証した。また『雑字類編』の一本について、その多数の書き入れ語を分析したところ『福恵全書』からの引用と考えてよいものが相当数あることを確認した。漢字語と振仮名の対応に疑問のある箇所の検討や、『福恵全書和解』『雑字類編』に関しての調査には、作成したデータベースが活用された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に従いほぼその通りに進行している。 完成したデータベースについては、自分の研究に於いてそれを使用して利便性と課題を確認するとともに錯誤を修正した。また中国研究者の助力を得て問題点を解消させた。 書誌調査はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度であることから、全体的に一定の成果としてまとまるような研究を行う。 個別的な課題としては、まず書誌調査を進める。とくに流布本と仮称するものに対しての修訂本と仮称するものの発見に力を入れたい。和刻本の他、可能な限り中国刊本の調査も行い、それらの結果をまとめ、公表する。 また、作成したデータベースをもとにその紙媒体での『索引』を作る準備作業を試みる。 『福恵全書』が日本近代語に果たした役割とその享受については、『福恵全書和解』をケーススタディとして、日本漢語としてどのような語が定着したかを調査する。 また、前年度に引き続き『福恵全書』の利用が推定される資料の掘り起しをおこない、和刻本がどのように用いられ、近代の日本化に関わったかを考察する。
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Causes of Carryover |
旅費については、書誌調査の遅れにより執行が遅れているが、翌年度に予定に基づきそれを行い予算執行する。 謝金等については索引のデータベースのプログラム化やデータチェクが続いており、全体計画を考えながら予算執行したため残金が出た。翌年度にはデータベースを紙媒体化するプログラムや編集などが予定されていて、これに残金は充当される。 物品費は印刷の他の経費にあてられる。
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