2019 Fiscal Year Annual Research Report
Basic study on "Fukukei-Zensyo"
Project/Area Number |
17K02788
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Research Institution | Seisen University. |
Principal Investigator |
荒尾 禎秀 清泉女子大学, 付置研究所, 客員所員 (20014813)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 福恵全書 / 和刻本 / 書誌研究 / データベース / 漢字語 / 振仮名 / 訳解 |
Outline of Annual Research Achievements |
第一の課題である、訳解(=振仮名)が付された漢字語のデータベースの作成は終了した。底本は「通行本」を用いた。これをもとに、紙媒体にして打ち出す想定で漢字語からその所在と訳解を検索する索引原稿をパソコン上で作成した。修訂本との異同が相当数あるので校異表を作成し、索引ではその項目にマークをつけて利便性を高める工夫を試みた。概ね予定通りの進行により成果を得た。校異表についてはなおわかりやすいものにする必要がある。 第二の課題である書誌調査に関しては予定通りに行われ、その結果諸本の分類の大概が把握できた。通行本は150部ほどが現存し、その前段階の修訂本は20余部残存する。異版はない。但し三類に分けられる修訂本の諸本をより高い精度で順序立てることはできていない。これは諸本の修訂状況がかなり複雑なためである。修訂本にみる修訂箇所は胡粉や墨書きによるもの都合250箇所、板木の埋め木や細工による修訂箇所は都合1000を超える。修訂本から通行本が成立した状況には不明点がなお多く、今後の課題である。 第三の、和刻本『福恵全書』が近代日本語、近代日本にどうかかわったかの課題については、ひとつには資料から該書の利用の様相の一端を明らかにしたが、なお研究を続行したい。もう一つは、作成したデータベースを大いに利用して論文を作成した。該書の享受に係るものとして、近代日本語の語彙の創成における左振仮名の機能の観点からの研究、また近代辞書史への影響の観点からの研究がある。訳解の特徴についての研究では、訳解と訓点の助詞の比較から左振仮名である訳解が口語性をもつことを論証した。当初予定していた辞書『言海』との語彙の比較研究は時間的に及ばなかった。 本研究で和刻本『福恵全書』が果たした役割の基礎的な部分は相当に明らかになったものといえる。
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Research Products
(2 results)