2017 Fiscal Year Research-status Report
Toward the Compilation of a Japanese-Japanese Dictionary for Learners
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17K02792
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Research Institution | Kyoto University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
森口 稔 京都外国語大学, 外国語学部, 非常勤講師 (40389094)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鄭 惠先 北海道大学, 国際連携機構, 准教授 (40369856)
中山 英治 大阪産業大学, 国際学部, 准教授 (50546322)
坂口 昌子 京都外国語大学, 外国語学部, 准教授 (60340428)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 辞書 / 日日辞典 / 見出し項目リスト / 日本語教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は、「充分な見出し項目数を有する学習者向け日日辞典」のコンセプトについて提案する準備段階の活動を行い、研究発表を行う段階には至っていない。 まず、代表者以外は、辞書編纂に関わった経験がないため、辞書作りの基本的事項について、代表者・分担者・協力者が合意を形成できるように、打ち合わせ・メーリングリストでの情報交換と各自の研鑽を進めた。一方で、全員が辞書編纂に関連する日本語教育についての知見を得ることに努めた。また、留学生の辞書使用の現状を把握する必要があると考え、アンケートのプロトタイプ調査を実施した。 辞書編纂に際しては、見出し項目のカバーする範囲や数、配列の方法などを含むマクロ構造と、各項目内に記載すべき情報や語義記述の方法などを含むミクロ構造の両方の視点を考える必要がある。本研究においては、「充分な見出し項目数」を課題としているため、まずは、何をもって「充分」と言えるのかについて、理論的かつ実践的な方法論を模索し始めた。具体的には、「文章中の単語の出現頻度の数と順位は一定である」というジップの法則の応用、国語辞典のみならず各言語の代表的な辞書の項目数の調査、固有名詞を含む百科的項目の必要性の調査、学習者の視点を考慮したN1など日本語検定試験の語彙項目の調査などを検討している。ミクロ構造については、Oxford Advanced Learners DictionaryやLongman Dictionary of Contemporary Englishが基本語3000語で、各語義の記述をしている点を参考に、日本語でも同様の方法が可能であるかどうかを検討するが、これは「充分な見出し項目」の後に考察することとした。 上記の活動と並行し、代表者は、科研とは別の辞書編纂を進めてきた。その辞書の情報を、著作権上の問題がない形で使用できるかどうかについても検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
最大の理由は、上述した、科研とは別の辞書編纂に、研究代表者が多くの時間を取られたためである。明治時代に編纂された、近代的国語辞典の嚆矢とも言える大槻文彦の『言海』を始めとして、辞書編纂は緻密かつ膨大な作業が要求され、予定が大幅に遅れることもしばしばである。研究代表者が編集主幹となっている、その辞書も例にもれず、当初の予定から1年近く遅れることとなり、それが現実的に本研究の活動に大きく影響を与えた。幸い、その辞書の編纂作業は終了し、研究代表者もそこで得た手法やデータを参考としながら、本研究に注力できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
第1・第2ステージ(5月~1月) 計画段階では、「充分」というに値する語数を第1ステージで決め、その内容を第2ステージで決めるという方法を考えていた。しかしながら、昨年度の議論の中で、語数と内容は同時に決定していくべきものであることが認識できた。その決定に向けて、ジップの法則を応用するためのコーパスの選定とそれに必要なツールの調査、代表的辞書の項目数の調査、超級レベルのインフォーマントにとっての未知語の調査、固有名詞を含む百科的項目の検討(研究代表者が編集主幹となった辞書を参考に)を進めている。
第3ステージ前半(1月~3月) 本研究で提案する辞書のミクロ構造については、研究代表者が辞書学の知識と経験に基づいてプロトタイプを提出し、研究分担者および研究協力者が日本語学および日本語教育の知見に基づいて改善していくという方法を取る。最終的には、数十語の語義を執筆する予定だが、今年度中にまずは十語程度の執筆を行いたい。定義に使用する語は、上述したように、英語では3000語程度だが、あらかじめ語数を決めることはせず、基本語彙に関する先行研究を参考にして作業を進めながら絞っていくこととする。
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Causes of Carryover |
進捗状況が「遅れている」とした理由にも挙げたように、昨年度は、当初の予定ほど活動ができなかったため、使用も少なくなっている。 今年度は、打ち合わせや学会・研究会への参加に加えて、ジップの法則を応用するためのコーパスとツールの使用、調査するための辞書の購入、インフォーマントへの謝礼などに予算が必要となると考えられる。
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