2018 Fiscal Year Research-status Report
新方言の生成過程にみる方言文法と日本語文法史のインターフェース
| Project/Area Number |
17K02798
|
|---|
| Research Institution | The International University of Kagoshima |
|---|
Principal Investigator |
松尾 弘徳 鹿児島国際大学, 国際文化学部, 准教授 (40423579)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
| Keywords | 方言文法 / 日本語文法史 / 新方言 / 文法変化 / 九州方言 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
今年度の主な実績概要は下記のとおりである。
①新方言の生成過程に関する研究：前年度に引き続き、本研究課題の主要テーマである日本語文法史の知見を生かした方言文法研究を進めた。鹿児島方言に見られる「あいづち表現ダカラヨ」「確認を表わす終助詞ケ」「同意要求表現セン」について、実施計画に基づいた方言調査をおこなっており、次年度中にその成果を学術論文化したいと考えている。
また、平成３０年１１月におこなわれた「第２回鹿児島方言週間フェスティバル」では鹿児島方言をモチーフとした謎解きイベントを申請者所属のゼミ生とともに実施し、申請者の研究成果を地域貢献活動として社会に還元した。なお、このイベントに関する一連の流れについては先に第１４回坂之上言語・文芸研究会（平成３０年５月開催）にて口頭発表をおこない、出席者からの助言を賜ったうえで実施にあたった。
②研究と大学教育とのつながりを考える研究：第６７回西日本国語国文学会（平成２９年９月開催）において開催されたシンポジウムのパネリストとしておこなった研究発表の内容を「『小さなことばたち』に目を向けられる学生をそだてるために」（『西日本国語国文学』第5号〈西日本国語国文学会〉）というタイトルで学術論文化した。上記シンポジウムおよび学術論文の主たる目的は日本語日本文学という学問領域と教育との接点を探るものであったが、内容の一部には申請者の方言研究の成果が含まれている。
③関連諸学会・研究会への参加：上記西日本国語国文学会や日本語文法学会、筑紫日本語研究会など関連諸学会・研究会へ今年度も積極的に参加し、日本語文法史および方言文法研究に関する最新の知見を学んだ。得られた知見は申請者の研究の進展にとって大いに役立つものであった。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「やや遅れている」と判断した理由は下記の２点による。
①課題申請時に記載した、新方言に関する調査成果を十分なかたちでは公開できていないこと。いまのところ、鹿児島県方言に関してはかなりの量の聞き取り調査データを得ているが、現時点ではデータをまとめる段階にとどまっており、そのデータの分析結果を公表できる段階に至っていない。
②研究実績の概要に記した通り、今年度は研究内容に関する学術論文および学会発表ともそれぞれ２件ずつ公表できたが、申請した研究課題に直接かかわるものとは必ずしも言い難いものも含まれていること。
課題最終年度となる令和元年度は、上記のような問題点を改善すべく研究活動にいっそうの時間を割きたい。
|
| Strategy for Future Research Activity |
平成２９年度、平成３０年度におこなってきた方言調査により得られたデータについては、表計算ソフトExcelを用いて鋭意整理をおこなっている最中である。
最終年度となる令和元年度中にはこの成果を積極的に学術論文や学会発表のかたちで公表したいと考えている。「研究実績の概要」欄にも述べた通り、鹿児島方言における「あいづち表現ダカラヨ」「確認を表わす終助詞ケ」「同意要求表現セン」などの比較的若い世代が用いると考えられる文法項目に関してその使用層や意味用法の記述をおこない、その成果を公表したい。
また、方言調査で得られたそのほかのデータに関しても日本語学および言語学的分析を加えてゆく予定である。とくに、申請者がこれまで力を注いできた日本語文法史研究の知見を生かして歴史的側面に重点を置いた方言文法研究をおこない、「九州新方言の文法研究」というテーマでまとめ上げたいと考えている。
|
| Causes of Carryover |
平成29年度の執行額（18万4000円）が当初計画額（50万円）よりも少なかったため、それによる繰り越し分をいまだ執行できていない。平成30年度は65万円を執行したが、令和元年度も平成30年度と同等額を執行予定である。次年度は鹿児島県内の離島地域（甑島や与論島、徳之島など）への方言調査を積極的に実施することを検討しており、旅費に関してこれまで以上の研究費を要するのではないかと考えている。
|
| Remarks |
依頼原稿：「日本語検定 受験団体の声」『ごけん2019年春号』№25（2019年発行）
|
