2018 Fiscal Year Research-status Report
複数の助動詞が生じる右方移動構文の内部構造と派生メカニズムの解明
Project/Area Number |
17K02802
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
木村 宣美 弘前大学, 人文社会科学部, 教授 (90195371)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | フェイズ / 併合 / 右方移動構文 / 構造と派生 / BEの語彙的特性 / 動詞句削除 |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究の目的】仮説「連結詞 (copula) beは助動詞beと動詞beに語彙的に区別される。」を仮定するフェイズ理論の枠組みで,複数の助動詞が生じる右方移動(rightward movement) 構文の内部構造 (structure) と派生 (derivation) メカニズムに対する従来の分析の妥当性を検証し,より説明的妥当性のある分析を提案することにある。
【研究実施計画(平成30年度)】平成29年度に得られた研究成果を基にして,複数の助動詞が生じる右方移動構文の内部構造と派生メカニズムの解明に資する,there存在文や文体的倒置文の統語的・意味的特性を抽出し,これらの総合的で包括的な調査及び分析に基づき,仮説「連結詞beを助動詞beと動詞beに語彙的に区別する。」に基づく本研究の分析検証と精緻化を行う。
【研究実績の概要】BEの語彙的特性に基づく動詞句削除分析,すなわち,BEには動詞のBEと助動詞のBEがあり,語彙的に区別されるとする仮説に基づく動詞句削除分析を提案した。i) 非定形のbeingは動詞である,ii) 非定形のbeenは助動詞である,iii) 非定形のbeは動詞か助動詞かで曖昧であることに基づき,動詞句削除とは,語彙項目BEがどのような範疇であるかという辞書 (Lexicon)に記載されている語彙的特性から予測できる現象であることを論じた。本研究の分析に従えば,動詞句削除とは動詞句を削除する現象であり,結果として,動詞のbeingとbeは削除されるが,助動詞のbeenとbeが削除されることはないと一般化することができる。本研究の帰結として,Boskovic (2014) のように,動詞句領域を支配する,一番上位のAspectPがフェイズであり,フェイズとフェイズ主要部の補部のみが削除されるとか,Aelbrecht and Harwood (2015) のように,削除される位置はthe progressive aspectual layerのvPprogであると規定する必要がないことを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【研究の目的】仮説「連結詞 (copula) beは助動詞beと動詞beに語彙的に区別される。」を仮定するフェイズ理論の枠組みで,複数の助動詞が生じる右方移動(rightward movement) 構文の内部構造 (structure) と派生 (derivation) メカニズムに対する従来の分析の妥当性を検証し,より説明的妥当性のある分析を提案することにある。
【研究の目的】を達成するために,【研究実施計画(平成30年度)】に基づき,以下の研究を実施した。[1] There存在文や文体的倒置文の諸特性の総合的で包括的な調査及び分析に努め,右方移動構文の内部構造と派生メカニズムの解明に資する,統語的・意味的特性を抽出した。[2] There存在文や文体的倒置文の内部構造と派生メカニズムの解明に資する,抽出された統語的・意味的特性に基づき,仮説「連結詞beを助動詞beと動詞beに語彙的に区別する。」を仮定するフェイズ理論の枠組みで,複数の助動詞が生じる右方移動構文の内部構造と派生メカニズムに対する本研究の分析の検証と精緻化を行なった。[3] 平成30年度に得られた研究成果を取りまとめ,Ars Linguistica 25 に学術論文「BEの語彙的特性に基づく動詞句削除分析」として,研究成果を発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
【研究実施計画(平成31年度)】平成31年度は,平成29年度-平成30年度に得られた研究成果を基にして,複数の助動詞が生じる右方移動構文の内部構造と派生メカニズムの解明に資する,as挿入節,so倒置文,比較倒置文の統語的・意味的特性を抽出し,これらの総合的で包括的な調査及び分析に基づき,仮説「連結詞beを助動詞beと動詞beに語彙的に区別する。」に基づく本研究の分析の検証と精緻化を行う。
【具体的な研究実施計画】[1] As挿入節やso倒置文や比較倒置文の諸特性の総合的で包括的な調査及び分析に努め,右方移動構文の内部構造と派生メカニズムの解明に資する,統語的・意味的特性を抽出する。[2] As挿入節やso倒置文や比較倒置文の内部構造と派生メカニズムの解明に資する,抽出された統語的・意味的特性に基づき,仮説「連結詞beを助動詞beと動詞beに語彙的に区別する。」を仮定するフェイズ理論の枠組みで,複数の助動詞が生じる右方移動構文の内部構造と派生メカニズムに対する本研究の分析の検証と精緻化をする。[3] 仮説「連結詞beを助動詞beと動詞beに語彙的に区別する。」を組み込んだフェイズ理論の枠組みで,複数の助動詞が生じる右方移動構文の内部構造と派生メカニズムの統語論・意味論的類似点・相違点を適切に捉えることのできる,普遍文法の構築とパラメータ設定の可能性を探る。[4] 平成31年度に得られた研究成果を取りまとめ,成果の発表を行う。
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Research Products
(1 results)