2019 Fiscal Year Annual Research Report
A Study on Semantic Interpretation of Unpronounced Subjects in Nonfinite Clauses
Project/Area Number |
17K02803
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
島 越郎 東北大学, 文学研究科, 教授 (50302063)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | コントロール / PRO / フェイズ / 非定形節 / 変項 / 潜在項 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、非定形節内の発音されない主語の意味解釈に関するコントロール現象について考察した。先ず、非定形節の主語を発音されない照応形と仮定し、主語の解釈を束縛条件 Aにより説明するManzini (1983)の分析を概観し、Manziniの分析には分離先行詞や潜在項の可否に関する照応形とPROの違いを説明できないという問題があることを指摘した。また、非定形節内に空演算子の移動を仮定し、コントロール関係を叙述関係により説明しようとするClark (1990) の分析を概観し、Clarkの分析には副詞節や主語として生起する非定形節の主語の解釈を説明できないという問題があることを指摘した。代案として、Chomsky (2000, 2001)で仮定されているフェイズ理論に基づく新たな解釈条件を提案した。この分析によると、非定形節の主語は統語部門から意味解釈部門への転送時に導入される潜在項であり、その値は構造構築の条件であるフェイズ条件に従って決まる。具体的には、新たに導入される潜在項と同一の転送領域内の要素を先行詞とするが、そのような先行詞が存在しない場合は、潜在項の値は文脈により決まる。意味解釈部門において統語構造に導入される潜在項という考え自体は、Clark により既に提案されているが、この潜在項の考えを非定形節の主語であるPROに適用する点においてClarkの分析とは異なる。また、潜在項が含まれる局所的領域内に先行詞が存在する時にのみ潜在項の値が決まり、存在しない場合は値が決まらないと仮定する分析は、Manzini の考えに近いが、解釈を決める際に重要な役割を担う局所領域が、現在の言語理論において独立に仮定されているフェイズに基づいている点において、本稿の分析とManziniの分析は異なる。更に、帰結として、包括的コントロールと部分的コントロールの可能性についても考察した。
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