2018 Fiscal Year Research-status Report
日英語ならびに西欧諸語における時制とその関連領域に関する発展的研究
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17K02804
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
和田 尚明 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (40282264)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邊 淳也 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (20349210)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 時制 / アスペクト / モダリティ / 心的態度 / 間接発話行為 / 比較研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
和田は,日英独仏蘭語の時制・相・モダリティ・心的態度・発話行為の比較研究の一環として,日英語の一人称小説における時制ならびに関連現象に関する相違,「意志」を表すwillの分析,英仏蘭語の進行形や完了形に関する「C-牽引」と文法化の関係に関する分析,日英語のモダリティと間接発話行為の関係に関する比較分析を行った。渡邊は,日本語ならびにロマンス諸語の時制・相・モダリティの比較研究の一環として,フランス語の半過去形の時制とアスペクト,フランス語の大過去形,フランス語のモダリティ・ムード全般についての研究を行った。 本年度の研究会ならびに講演会の活動記録は以下のとおりである。第1回研究会(和田尚明):「日英語の一人称小説の地の文における時制現象の対照研究:三人称小説との違いに触れながら」(2018年4月24日) 第2回研究会(鈴木彩香):「日本語におけるトキ節の時制解釈ール形とタ形の非対称性を中心にー」(2018年5月22日) 第3回研究会(渡邊淳也):「フランス語半過去形と叙想的時制・叙想的アスペクト」(2018年6月19日) 第4回研究会(若松弘子):「ポーランド語動詞の時制とアスペクト」(2018年7月10日) 第5回研究会(和田尚明):「Willの「意志」用法について:意味的か,語用論的か,あるいは,その両方か?」(2019年1月22日) 第6回研究会(渡邊淳也):「フランス語大過去形の特徴的用法について」(2019年2月5日) 言語学講演会:「懸垂分詞から慣用的語用論標識へ」(早瀬尚子)・「英語の同族目的語構文と事態認知」(堀田優子)(2018年12月13日) 口頭発表については,和田・渡邊ともにChronos13(6月4日~6日:ヌーシャテル大学(スイス))で研究発表を行った。加えて,和田は第5回国際英語学会(7月17日~20日:ロンドン大学(イギリス))でも発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,和田が本研究の枠組みとなる発展型包括的時制モデル(自らの時制理論に言語使用の三層モデル・C-牽引・認知モードを取り入れたモデル)が「日英独仏蘭語の時制・相・法・発話行為現象」をどこまで分析できるかを,いくつかの個別現象(英独仏蘭語の完了形の比較分析や日英語ならびに西欧諸語の未来表現の比較など)を基に検証し,渡邊が「日仏語ならびにロマンス諸語の時制・法・非定形に関する比較研究」を行う予定であった。和田については,全体としては,未来表現の分析に関して英仏語以外の西欧言語の研究があまり進まなかったものの,取り扱う予定だった以外の現象として,日英語の一人称小説ならびに三人称小説における時制・相現象の分析をさらに推し進めた。渡邊については,ほぼ予定通りに研究を行った。したがって,全体としてはおおむね順調に進展していると言える。 より具体的に述べると,和田は,(1)昨年執筆した「英語の未来表現」に関する著書を修正・発展させ(2019年度出版予定),(2)物語の地の文という「状況報告」に特化した言語環境において,公的自己としての話者の意識への引き寄せ(C-牽引)が発動するメカニズムの更なる精緻化を行い,(3)英独仏蘭語の完了形と進行形の文法化現象とC-牽引がどう関わってくるかを考察した。渡邊は,(1)叙法(ムード)に関する著書を出版し,(2)大過去形や半過去形の分析,(3)非定形構文であるジェロンディフの定量的分析などを行った。 これらの研究は,今年度の研究成果でも示されているように,国内外での研究発表・ワークショップでの口頭発表ならびに学術誌や学術図書への論文掲載,学術図書の出版という形で成果をあげている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度も,引き続き当初予定の路線に従って,和田は「日英独仏蘭語の時制・相・法・発話行為現象が発展型包括的時制モデルによってどこまで分析できるか」をいくつかの個別現象(例:英独蘭語の未来表現,英語の完了形・完了進行形,日英語の物語文における時制とその関連現象)の分析を通じて検証し,渡邊は「日本語とロマンス語の時制・相・法・証拠性に関する現象の比較分析」をいくつかの個別現象(例:フランス語の半過去形の叙想的用法ならびに時制とモダリティとの関連性,フランス語と他のロマンス諸語の単純未来形・条件法の機能,フランス語と他のロマンス諸語の物語文における大過去形の機能)の分析を通じて行っていく予定である。 研究会活動としては,今年度も年に数回開催し,和田・渡邊ともに1~2回発表し,ほかにもTAME研究会のメンバーやテーマが関連する大学院生にも発表してもらう予定である。研究発表としては,和田が,8月に開催される国際認知言語学会第15回大会にて「willの意志用法」(単著)について口頭発表し,「感情を表す現在完了進行形の用法」(共著)についてポスター発表する予定である。また,渡邊は,5月に開催される日本フランス語学会シンポジウムにて「単純未来形と条件法(およびそれらの複合時制)」をテーマに発表し,11月に開催される言語系学会連合シンポジウムでは「フランス語の認知モードとアフォーダンス」(招待講演)をテーマに発表する予定である。
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Research Products
(9 results)