2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K02808
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
田中 智之 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (20241739)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 非定形節 / 否定辞 / 副詞 / 機能範疇 / 動詞移動 / 不定詞節 |
Outline of Annual Research Achievements |
英語の不定詞節における否定辞の分布の歴史的発達を明らかにするために、電子コーパスを用いて否定辞を伴う不定詞節のデータについて調査を行った。まず、to不定詞節に関しては、古英語から初期中英語においてnotがtoに先行する語順(not-to-V語順)のみが可能であったが、後期中英語においてnotがtoと不定詞の間に現れる語順(to-not-V語順)、およびnotがtoと不定詞の両方に後続する語順(to-V-not語順)が見られるようになり、初期近代英語において本動詞を伴うto-V-not語順が消失したことが分かった。その結果、17世紀半ば以降はnot-to-V語順とto-not-V語順、および助動詞を伴うto-V-not語順のみが許されるようになった。原形不定詞節についても調査を行ったが、後期中英語と初期近代英語において不定詞が否定辞に先行する語順が僅かに観察されるものの、基本的には英語史において否定辞の分布に関する大きな変化は見られなかった。 後期中英語から初期近代英語に見られるto-V-not語順は動詞移動により派生されると考えているが、それを証拠付けるために、to不定詞節における不定詞とvPに左付加されている副詞との相対語順について調査を行った。対象となるのは副詞neverと短い目的語に先行する副詞を含むto不定詞節であるが、否定辞の分布に関するデータと一致して、後期中英語から初期近代英語において不定詞が副詞に先行する語順の割合が高いことが分かった。また、スカンジナビア言語に見られる目的語転移に類似した現象、すなわちto-V-not語順において代名詞目的語が否定辞に先行する語順が、この時期に少数ながら観察される。一般に目的語転移はvP外への動詞移動を前提とするので、この事実もto不定詞節において動詞移動が適用されていたことを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
原形不定詞節についてはあまり有意義な調査結果は得られなかったが、英語の非定形節のうち不定詞節に関する電子コーパスを用いた調査をほぼ終えており、to不定詞節における否定辞の分布の歴史的発達の全体像が明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの調査により得られた英語の不定詞節における否定辞の分布の歴史的発達について、不定詞節の構造変化、および定形節における否定辞の分布と関連付けて、生成文法理論の枠組みにおいて説明する。また、調査対象を分詞節と動名詞節にも拡張し、非定形節における否定辞の分布の歴史的発達を明らかにするとともに、非定形節の種類により違いが見られる場合には、それぞれの非定形節の構造変化にその要因を求める形で研究を進める。
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Research Products
(2 results)