2018 Fiscal Year Research-status Report
程度の存在論:統語論・意味論・語用論からの多角的アプローチ
Project/Area Number |
17K02810
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
南 英理 (田中英理) 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (40452685)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉本 真由美 実践女子大学, 文学部, 助教 (60580660)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 比較文 / 程度 / 程度副詞 / さらに |
Outline of Annual Research Achievements |
(A) 日本語に程度項があり、それが量化や変項として機能することができるかを検討するため、「さらに」などのような先行文脈にある程度を高めるような作用をする副詞を用いて、ヨリ比較構文、「以上に」比較構文における振る舞いを日本人話者20人ほどに調査した。また、これと同時に、ヨリ比較構文と「以上に」比較構文において、「以上に」は(ヨリとは異なって)程度の集合を形成する、という主張についての検討も行なった。その結果、(i) 「さらに」+ヨリ比較文では、先行文脈における特定の値を先行詞とする照応関係を確立することはできる。(ii) 「さらに」+ヨリ構文では、束縛変項解釈が可能かどうかをテストすることは難しい。なぜなら、先行する文脈におけるどの値よりも上の値を示さないとならないため、(i)の特定の値を先行詞とする場合と峻別が難しいからである。(iii)一方、以上に構文では、束縛変項に類似した解釈が得られるという話者もいるが、話者間の判断が一定ではないため、これについても検討する必要がある、という結果を得た。これらの結果について、学会発表等への準備を進めている。 (B) 英語のstillやevenを伴った比較構文は、日本語の「さらに」比較構文と類似の意味的制約を持つ。一方、日本語の「まだ」の比較構文における振る舞いは、英語のstillと同じ解釈と異なる解釈をもつ。この点について、語用論的文脈と「まだ」の持つ前提との相互作用によって説明できることを示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「ヨリ・以上に」比較文について、いくつかの制約があることが明らかになったが、これらをうまくコントロールして、量化や束縛変項解釈の有無を調べる必要があるが、質問紙あるいは口頭でのインフォーマント調査では、限界がある。これらのコントロールをうまく行う必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
調査については、質問紙とともに、実験的な手法を用いて、画像等の提示とともに刺激文の判断をしてもらうことを検討している。
|
Causes of Carryover |
(i)学会開催地が国内であったこと、(ii)調査項目の精査に時間を要したため、調査が予定より遅れたことで人件費が必要でなかったことが挙げられる。 次年度にはまず調査を早い時期に行うこと、および、国内外の学会に応募することを予定している。
|
Research Products
(2 results)