2019 Fiscal Year Research-status Report
程度の存在論:統語論・意味論・語用論からの多角的アプローチ
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17K02810
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
南 英理 (田中英理) 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (40452685)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉本 真由美 実践女子大学, 文学部, 助教 (60580660)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 程度 / 比較 / ヨリ / 否定の島の効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、日本語のヨリ、クライで表される優劣比較文・同等比較文について、ヨリ・クライ節内のいわゆる否定の島の効果を検討した。 比較文における否定の島の効果は、比較基準の節(英語ではthanで導かれる節)がその節で記述される程度の最大値を指す意味を持つことによる。英語の*John is taller than nobody is. では、than節が「誰も到達していない背の高さの中の最大値」を指すと解釈されるが、そのような値は設定できないことが否定の島の効果を生む。日本語のヨリ比較文は否定の島の効果を生まないという観察がBeck et al.でなされ、そのため、日本語のヨリ節はそもそも程度の集合を作り出すような操作が統語的に存在しない、という主張がなされてきた。 今年度は、ヨリ、クライ節で否定がとるスコープに着目してデータを整理し、否定が述語だけにかかる場合と広いスコープをとる場合で否定の島の効果について異なる言語判断が得られること、このことから、日本語でも否定が広いスコープをとる場合には否定の島の効果が見られることを指摘した。さらに、否定の島の効果はクライ節では観察できないことを指摘した。従来、同等比較も優劣比較も比較基準節は同じように分析されているが、この結果は言語ごとに程度項集合を作るような操作の有無を設定するより、語彙項目ごとに程度集合が最大値を返すか存在量化を返すかを決めるような操作を仮定する方が良いのではないかということを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
日本語のデータの要因の分析に時間を要しているため、当初よりもやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、(i) 日英語の比較文・同等比較で、英語の否定の島の効果で観察されているような否定の島の弱め効果が観察されるかどうか、(ii) 否定の島以外の現象、特に他の要素と比較表現とのスコープ関係についてのデータの整理と検討を行う。
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Causes of Carryover |
成果発表のための旅費に関して、家庭の事情および新型コロナウィルスの蔓延によって実際の渡航を中止し、オンラインでの研究発表を行ったことにより旅費の使用額が減った。また、いくつかのデータ整理の遅れによってインフォーマントへの依頼が済んでおらず、謝金が発生しなかった。 次年度は、引き続きデータの取得とその謝金、および論文投稿費、校正代、書籍などの購入にあてる。国内学会については旅費を使用する可能性がある。
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Research Products
(11 results)