2017 Fiscal Year Research-status Report
A Syntactic Study on the Diachronic Development of English Psych-Verbs: With Special Reference to Argument Realization and Grammaticalization
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17K02812
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
縄田 裕幸 島根大学, 教育学部, 教授 (00325036)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 生成文法 / 統語論 / 英語史 / 言語変化 / 心理動詞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,英語心理動詞の通時的発達に関する以下の2つの仮説を検証することである。(a) 中英語における非人称心理構文は,目的語経験者動詞の外項が音声的に発音されない空項として具現化したものである。(b) 近代英語におけるV not型の否定文は,心理動詞が文法化を経て軽動詞として用いられたことから生じた。仮説 (a) が正しければ,非人称心理動詞構文の消失は話題卓越型言語から主語卓越型言語へという英語の類型論的変化の帰結のひとつとして説明される。また仮説 (b) が正しければ,一般動詞の法助動詞化と類似したプロセスが,後期近代英語の心理動詞についても生じていたことになる。 このうち、本年度は主として仮説(b)の検証を行った。初期近代英語において,多くの動詞は文中副詞や否定辞notに先行する語順からこれらの要素に後続する語順へと移行したが,know, believe, doubt, careなど一部の動詞はこの語順変化に抵抗し,否定文において引き続き古い語順を示し続けた。統語的パラメタ変異に基づく従来の分析では,これらの動詞の例外的振る舞いを説明することは難しかったが,本研究では文法化の観点からこの現象の原理的説明を試みた。具体的には,knowなどの心理動詞は初期近代英語で1 人称主語における主観的用法が引き金となって軽動詞としての用法を発達させ,これらがNegPよりも上位で基底生成された結果,見かけ上の残留動詞移動現象が生じたことを明らかにした。この研究成果を縄田(2017)としてまとめるとともに、成果の一部を縄田ほか(2018)にも反映させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の着想のもとになった2つの仮説((a) 中英語における非人称心理構文は,目的語経験者動詞の外項が音声的に発音されない空項として具現化したものである。(b) 近代英語におけるV not型の否定文は,心理動詞が文法化を経て軽動詞として用いられたことから生じた。)のうち、(b)の点について実証的・理論的な検証作業を終えることができたため、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
30年度は、主として仮説(a)「中英語における非人称心理構文は,目的語経験者動詞の外項が音声的に発音されない空項として具現化したものである」の妥当性を検証する。具体的には、以下の2点を調査・研究する。第一に、共時的統語論で明らかにされてきた現代語の目的経験者心理動詞の語彙意味論的特徴が、中英語の非人称動詞にどの程度当てはまっていたのかを検証する。もし、中英語における目的語経験者動詞と非人称動詞の集合が異なっている場合には、その要因についても併せて分析する。第二に、非人称心理動詞構文と古英語・中英語のいわゆる「空主語」構文の共通性に関して研究を進める。先行研究では初期英語の空主語構文が、実際には「空話題構文」として分析されることが指摘されており、これは「空主語」構文の出現頻度が従属節よりも主節で高いことによって裏付けられている。そこで、同じ時代の非人称心理動詞構文が「空主語」構文の一種として分析されうるかどうかを検証するために、非人称構文の出現頻度を主節と従属節で比較する。
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Causes of Carryover |
主として、年度当初に予定していた国外旅費(調査旅費)を使用しなかったため、次年度使用額が生じた。この予算に関しては、次年度の国内および国外旅費、さらに物品費(主に図書費)として有効に活用する計画である。
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Research Products
(2 results)