2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K02824
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
保坂 道雄 日本大学, 文理学部, 教授 (10229164)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 文法化 |
Outline of Annual Research Achievements |
現代英語のBE動詞は、本動詞・コピュラ・助動詞等の多様な意味・機能を持っている。本研究は、こうしたBE動詞は英語の通時的過程の中で文法化した結果できたものであるとの前提に立ち、その変化について共時的及び通時的両面から詳細な分析を行うことを目標としている。 今年度の研究は、まず、BE動詞の用法についての基本的文献を集め考察を行った。対象とした研究は、Bowers (1993), den Dikken (2006), Heggie (1988), Moro (1997, 2000), Pustet (2003), Progovac (2015), Williams (1994, 2003)等多岐にわたる。特にBE動詞がコピュラとしてどのような機能を有しているかに関して考察を進め、BowersやMoro等が仮定するPredPの構造の中核をなすと考える。その上で、こうした機能投射構造が如何に創発したかについて、以下のような実証的な議論を行った。 平成29年5月の日本英文学会では、「機能範疇創発のメカニズム」の題目のもと、 コピュラのBEがPredPの主要部であることを、YCOE等のコーパスをデータとして、検証を行った。なお、その際の議論は日本英文学会第89回大会プロシーディングに掲載された。 平成29年7月の英国リーズ大学で開催されたIMCにおいては、”Ambiguity between the BE perfect and the BE passive in Old English”の題目のもと、古英語におけるBE+過去分詞の構文の意味と構造について、古英語の福音書マタイ伝を資料として、議論を行った。その際、古英語訳の原文であるラテン語との比較を通して、古英語のBE+過去分詞の構造的曖昧性について詳細に分析を行った。なお、本発表原稿をもとに現在論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究達成目標は、①先行研究の考察、②コーパスデータの整理・分析、③聖書の時代別パラレルコーパスの作成、④古英語におけるBE動詞の構造分析の4つを主なものとした。①については、現代英語の叙述構造の分析から進化言語学の視点からの叙述構造の分析を中心に考察を進め、本年度の各発表の基礎資料とすることができた。②に関しては、Early English BooksとYCOEにおけるBE+come/goneのデータを収集し、現在分析を行っている。今年度中にはその結果を研究発表する予定である。③については、マタイ伝の古英語と現代英語のパラレルコーパスの作成を行った。基礎データとするテキストの修正作業に思いの外時間が掛かり、完成にはもう少し時間が必要であるが、その一部を用いて、昨年7月のイギリスでの国際学会にて研究発表を行った。④に関しては、昨年5月の日本英文学会と本年1月のハワイでの国際学会において、その成果の一部を発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画として、引き続き、昨年度の達成目標の4つ(①先行研究の考察、②コーパスデータの整理・分析、③聖書の時代別パラレルコーパスの作成、④古英語におけるBE動詞の構造分析)を中心に研究を遂行する予定である。①に関しては、本年出版されたMoro (2018)のA Brief History of the Verb To BEを中心に、BE動詞に関する通時的研究をより深く考察する。②については、古英語から初期近代英語までのBE完了形のデータについて包括的に収集・分析を行う。③に関しては、マルコ伝、ルカ伝、ヨハネ伝のパラレルコーパス化に向け作業を続ける。④については、言語進化の側面も考慮に入れながら、BE動詞の構造変化について、国際学会等での発表を予定している。
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Causes of Carryover |
今年度は、一部購入を予定していた消耗品の価格に変更があったため、607円の残金が生じた。本年度の消耗品購入に充当する予定である。
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Research Products
(7 results)