2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K02824
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
保坂 道雄 日本大学, 文理学部, 教授 (10229164)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 文法化 |
Outline of Annual Research Achievements |
現代英語のBE動詞は、本動詞、コピュラ、助動詞等の多様な意味・機能を持っている。本研究では、こうしたBE動詞は英語の通時的過程の中で文法化した結果できたものであるとの前提に立ち、その変化について共時的及び通時的両面から詳細な考察を行うことを目標としている。 今年度の研究は、BE+現在分詞とBE+過去分詞が、それぞれ現在進行形及び受動態として確立する過程に関して、現在作成途上にある聖書の時代別パラレルコーパスに基づき、考察を進めたものである。また、特にその萌芽的状況にある古英語に焦点をあて、現在進行形や受動態の構造が確立する以前にどのような構造を想定すべきであるかを考察した。 その成果は、平成30年5月に出版された『英語学が語るもの』(くろしお出版)の中に収められた論考「変幻自在なBE動詞の謎」として発表した。本論文では、古英語において、BE+現在分詞及びBE+過去分詞にそれぞれ、4つの用法(Appositive, Verbal, Adjectival, Nominal)があったことを確認し、統語的には本動詞のBEを中心とした構造、コピュラのBEを中心とした構造に分類可能であることを論じた。また、中英語にPassive構造([FP NP [F' BE+F<Top> [FP NP [F' BE+F<Pass> [VP NP PP(=V)]]]]] )が確立し、近代英語期にProgressive構造([FP NP [F' BE+F<Top> [FP NP [F' BE+F<Prog> [VP NP PrP(=V)]]]]] )が確立したと主張した。受動態と進行形の発達を説明する新たな視点であり、更なる研究に繋がるものである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究達成目標は、①先行研究の考察、②コーパスデータの整理・分析、③古英語におけるBE+過去分詞の構造分析、④古英語におけるBE+現在分詞の構造分析、⑤両構造の中英語以降の発達に対する仮説の構築の5つを主なものとした。①に関しては、Moro (1997, 2018)やden Dikken (2006)の研究を批判的に考察し、本研究の主張を構築する背景的知識とした。②に関しては、現在制作中である聖書の時代別パラレルコーパスを利用して、古英語のBE+過去分詞及び現在分詞の構造について分析を行った。③~⑤に関しては、論文「変幻自在なBE動詞の謎」及び英語論文"Ambiguity between the BE Perfect and the BE Passive in Old English"としてまとめ、その成果を公表している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画としては、引き続き、今年度の研究達成目標である先行研究の考察及びコーパスデータの整理・分析(特に、聖書の時代別パラレルコーパスの構築)に加え、英語のBE完了の盛衰(HAVE完了との対比及びBE受動態との競合関係等)について考察を深める予定である。なお、本年12月に開催される2019年日本歴史言語学会にて、その成果を発表予定である。
|
Causes of Carryover |
今年度は、一部購入を予定していた書籍等の販売時期に変更があったため、26,270円の残金が生じた。本年度再度購入する際に充当する予定である。
|