2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K02824
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
保坂 道雄 日本大学, 文理学部, 教授 (10229164)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 文法化 |
Outline of Annual Research Achievements |
現代英語のBE動詞は、本動詞・コピュラ・助動詞等の多様な意味・機能を持っている。本研究は、こうしたBE動詞は英語の通時的過程の中で文法化した結果できたものであるとの前提に立ち、その変化について共時的及び通時的両面から詳細な分析を行うことを目標としている。 今年度の研究は、当初BE+過去分詞を含む構文について古英語のみを中心に分析を行う予定であった。しかしながら、これまでの2年間で既に古英語・中英語のBE+過去分詞の構造についてはある程度考察を進めているため、今年度は古英語から近代英語までの同構造について分析を行うこととした。特に、BE+過去分詞の完了用法の盛衰に着目し、古英語・中英語においては自動詞の過去分詞と共に使われることが多かった同構文が、近代英語以降、急速に衰退する状況を詳細に分析した。その際、言語資料として、従来のYCOE、PPCME、PPCEME等の小規模コーパス(各150万語程度)だけではなく、EEBO(約7.5億語)、COHA(約4億語)、Google Books(約4,680億語)の大規模コーパスを用いた調査を行った。その結果、1800年以降、go等の一定の動詞を除いてBE+過去分詞の完了構文が急速に衰退する様子細かく捉えることが可能となった。なお、本研究結果は、2019年12月に開催された日本人間行動進化学会(明治学院大学)、日本歴史言語学会(広島大学)、2020年1月に開催された国際学会ISALR(別府)にて、発表を行った。 また、同時に、英語のおける機能投射構造の通時的発達に関する理論的考察として、その創発現象的側面の研究を行い、形式理論的考察と認知意味論的考察の双方の重要性を論じた。なお、その研究結果は、2020年3月に開催された国際学会HICELLS(ハワイ大学)にて、発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、今年度の研究目標は、古英語におけるBE+過去分詞の受動態構文と完了構文に限定したものであったが、研究業績概要にも記したとおり、前年までにある程度の成果が出ているため、その研究の幅を広げることとした。具体的には、近代英語の大規模言語コーパスにまで調査を広げ、これまでにない規模での調査・分析を行うことが可能となった。具体的には、Early English Books Online, Corpus of Historical American English, Google Books等の数億語から数千億語からなるビックデータを使い、言語進化的視点も加味した考察を行っている。特に英語のBE+過去分詞の構文は歴史的に大きな変化を被っており、こうした大規模な調査が新たな研究の視点を提供する可能性が高いと思われる。事実、今年度の研究では、英語のBE+過去分詞の完了構文は、動詞毎で変化の程度には違いは見られるが、19世紀以降急速な衰退が生じていることが実証された。また、その変化の様子はランダムなものではなく、何らかの適応的力の方向性が存在することを示唆するものであった。こうした新たな観点からの研究を今後も進めていきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画としては、引き続き、各種言語コーパスを利用して、BE+過去分詞・現在分詞の構文の変化について、理論的かつ実証的な考察を行っていく。特に近年関心が高まっている文法化と言語進化の関係にも考察を広げ、BE動詞を中心とする英語の機能投射構造の進化について更なる議論を行う予定である。なお、本年開催予定であるEvoLang(ブリュッセル)やIC2S2(ボストン)等の国際学会での発表に向けての準備も進行中である。また、2020年度中に発行予定である『歴史言語学』やModern Journal of Studies in English Language Teaching and Literature等の研究雑誌に投稿を予定している。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響で、海外出張がキャンセルになったため、残額が生じました。今年度の研究費用(物品費、旅費)として利用致します。
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