2018 Fiscal Year Research-status Report
The Mechanism of Occurrence and the Licensing Conditions of VP Ellipsis: A Comparative Study of English and Japanese
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17K02827
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
高橋 眞理 京都産業大学, 外国語学部, 教授 (20247779)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 動詞句省略 / 生起メカニズム / 先行詞条件 / 日本語 / 英語 |
Outline of Annual Research Achievements |
1 英語動詞句省略(VPE)の生起メカニズムと先行詞条件諸提案の鍵となった構文に対応する日本語構文の整理と、その諸特性、意味解釈の可能性、先行詞条件に関する分析を行った。 2 次のA1~F2計12構文-動詞句(VP)(各6文)の適格性の判断(B1、E1、F1、B2、E2、F2に関してはさらにその解釈)を問う、日本語母語話者計125人を被検者とした2種類の実験を実施した(E1・2とF1・2では刺激文を音声で提示): A1-B1-D1:その先行詞が同一文目的語に含まれ、VPEを受けた(A1&B1)/「そう」で代用された(D1)、自由動詞を主要部とするVP(FV-VP)(B1&D1はかき混ぜを含む)、C1:その先行詞が同一文主部に含まれる、VPEを受けたFV-VP、E1-F1:拘束動詞を主要部とするVP(BV-VP)を先行詞とし、BVだけが発音されたVP(対比的焦点(CF)の位置を変えた対)、A2-D2:その内部からのwh-移動があり、VPEを受けた(A2)/「そう」で代用された(D2)FV-VP、B2:VPE下でBVが省略され、「す」が続くVP、C2:A1と同じ構文での逆行省略、E2-F2:名詞化されたFV-VP補部を含むFV-VPを先行詞とするVPE(CFの位置を変えた対) 得られた結果のうち、(1a~c)は予測通り、(2a~b)は予測に反するものであった。 (1) a) E1、F1、A2、E2は適格であり、A1、C1は不適格であると判断された。b)B1の容認度はA1のそれより有意に高く、D2の容認度はA2のそれより有意に低かった。c) B1に対する解釈の誤りはほとんどなかった。(2) a) E1・2とF1・2において、CFの位置に対応した解釈の違いはほとんどなかった。b) (1a)に挙げた構文以外は、その適格性に関して中間的な判定を受けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験室の被験者用パソコンが耐用年数を超え、安定して作動しないものがあり、募集する被験者数を実験室の収容人数以下にせざるをえなかったこと、音声ファイルを使用したことによりプログラム(昨年度同様Zurich Toolbox for Readymade Economics Experimentを使用)の容量が大きくなり、一回の実験を数セッションに分ける必要が生じたことなど、ハードウエアに関する問題はあったが、日本語母語話者125人を被検者とした2種類6回のコンピューター実験を実施することができ、計113人分の分析可能なデータを得ることができた。得られた結果は基本的には理論が予測する方向の対照を示すものであった。しかし、予測していた「対比的焦点(CF)の位置と解釈の対応」は見られず、その他にも、研究代表者一人の判断に基づいた予測とは異なった反応が多く見られた。今後、これら予想外の結果が実験の不備によるものではないことを確認する作業、日本語の母語話者の直感を正しく反映していると確認できた部分に関しては、その理論的示唆を検討する作業を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
1 引き続き、英語の動詞句省略(VPE)に関する文献調査、VPE諸構文の特質に関する一般化の整理、理論の比較・分析を行う。特に、2019年2月にようやく出版されたOxford Handbook of Ellipsisに収録されている諸論文の主張とその根拠を精査する。 2 引き続き、英語VPEの生起メカニズムと認可条件諸提案の鍵となった構文に対応する日本語構文の整理とそれらの諸特性、意味解釈の可能性、および先行詞条件に関する分析を行う。 3 今年度の実験結果で予想外であった部分の原因分析を行い、可能であれば、今回の実験デザインの不備を修正した実験を実施する。また、これまでに調査することができなかったVPE関連構文に関する新しい実験をデザイン・実施する。
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Causes of Carryover |
実験のための人件費・謝金に予定以上の金額が必要となり、今年度の物品費をそれに充てたため、機器類を購入することができなかった。 来年度も同様の状況が生じることが予測されるため、実験のための人件費・謝金に充てたい。
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