2022 Fiscal Year Research-status Report
The Mechanism of Occurrence and the Licensing Conditions of VP Ellipsis: A Comparative Study of English and Japanese
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17K02827
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
高橋 眞理 京都産業大学, 外国語学部, 教授 (20247779)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 動詞句省略 / 先行詞条件 / 後方照応 / 日本語 / 英語 |
Outline of Annual Research Achievements |
1 英語の動詞句省略(VPE)および関連現象に関する理論の比較・検討を行った。 2 VPEの先行詞条件諸提案の鍵となった構文に対応する日本語構文のうち、昨年度の調査で予想外の回答パターンが見られた構文(下記(1)A vs.B)と類似構文に焦点を当て、(1)のA~D4構文(A~Cは肯定文と否定文各3文)の適格性の判断を5(適格)から1(不適格)までの5段階評価で(さらに一部の実験文についてはその解釈の可能性を)問う実験を、日本語母語話者52人の参加を得て行った。有効データ42人分の各構文への判定平均値(SD)[予測値]は(1)、結果の示唆、主な成果は(2)と(3)の通りである。 (1) A:自由動詞(FV)を述語動詞(PV)とし、その目的語に含まれる関係節が主節と同じPVを持ち、主節VPが関係節VPを「先行詞」としてVPEが生起している文2.90(1.19)[1]、B:Aと同じだが、前方ではなく後方照応が起こっている文3.33(1.16)[1]、C:Aと同じだが、PVの目的語が主語より前方に「かき混ぜ」によって移動されている文(例:健が合格したすべての大学に誠もした。)3.82(1.19)[5]、D:文主語が関係節を含み、主節VPが関係節VPを「先行詞」としてVPEが生起している文1.17(.34)[1]。 (2) Dは予測通り「1」に近い判定を受けた。他の構文の容認度はすべてそれよりも有意に高く分散も大きいが、その中でCの容認度が最も高かった。これは、VPEが起こっている節でPVの目的語が発音されるためには目的語がVPの外に移動されている必要があること、Cではそれが語順から明確であり、後方ではなく前方照応が起こっているからであると考えられる。 (3) 昨年度と異なり、AとBへの容認度に強い有意差は見られなかった。「この構文で後方照応を好む日本語母語話者が存在する」とは言えない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ禍のため、本研究課題の研究計画の中核を成すコンピューター実験室に被検者を集めて行う実験を、2023年1月に一回しか実施することができなかった。 実施時期が学期末で、実験参加者数も52人と少なかったが、いくつかの文で動詞句省略の先行詞を含む関係節の存在を「無視」した解釈が見られるなど、今後の研究の手がかりとなる興味深い実験結果も得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
1 引き続き、英語の動詞句省略(VPE)と関連構文の新しい研究成果の整理、および諸理論の比較・分析を行う。 2 引き続き、英語VPEの生起メカニズムと認可条件諸提案の鍵となった構文に対応する日本語構文の整理とそれらの諸特性、意味解釈の可能性、および先行詞条件に関する分析を行う。 3 これまでの実験結果で予想外であった部分の原因分析を行う。また、これまでに調査することができなかったVPE関連構文に関する新しい実験をデザインし、可能であれば実施する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、コンピューター実験室に被検者を集めて行う実験を一回しか実施することができず、実験参加者への謝金が予定を大幅に下回った。 実験が可能なら、その準備と実施のための人件費・謝金と、これまでに購入することができなかった機器類の購入に充てたい。
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