2017 Fiscal Year Research-status Report
英語音声変化が生じる発話環境の解明と音声変化習得データベースの構築
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17K02834
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Research Institution | Iwate prefectural university,Miyako college |
Principal Investigator |
神谷 厚徳 岩手県立大学宮古短期大学部, その他部局等, 准教授 (60511160)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 音声変化 / 同化 / 連結 / 脱落 / 発話速度 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、音声実験(パイロットスタディ)および英語音声学教材の調査を行った。 音声実験(パイロットスタディ)では、筆者の仮説「英語の音声変化が生じ始める閾値となる発話速度が存在する」を検証した。具体的には、アメリカ人成人を対象に、英文朗読という形で音声実験を行った。まず、彼らに静かな個室で、300ms.にセットされたメトロノーム音を聞かせ、300ms.の速度を記憶させた。その後すぐ、メトロノームを使わず、記憶した300ms.に沿って可能な限り自然に次の3つの英文を読み上げてもらった。英文1:“I want to turn off the radio.”英文2:“I’m going to meet you soon.”英文3:“Come and join us.”朗読された音声は直接パソコンに録音し、聴覚印象のみでなく音声分析ソフトを用いて、音声変化が生じたか否かを客観的に判別した。同様の手法で、様々な速度における音声変化を検証した。本実験を通して、たとえば、連結の中でもn連結が生じ易いなど、音声変化の生じる速度・頻度は一律ではないことが明らかとなった。 この結果を受け、平成29年度では、現在入手可能な全ての英語音声学教材を対象に、そこに記載されている音声変化の例文を全て抜粋し、記載頻度の高い例文を明らかにした。その過程において、日本語で記載された教材(日本人学習者向け)と英語で記載された教材では、説明や例文において違いがみられ、これらを比較考察することで、特に日本人英語学習者が習得すべき音声変化を明らかにしてきた。 平成30年度以降は、これら記載頻度の高い音声変化(たとえば記載数の多い上位50例)を実験材料として、英語母語話者への音声実験を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度は、英語音声学教材で頻出する音声変化(同化、連結、脱落)を明らかにした。当初は、さらに、それらを実験材料とした音声実験を愛知学院大学で実施予定であった。愛知学院大学は、今回連携研究者をお引き受け頂いた都築正喜教授(日本英語音声学会会長)の勤務先であり、10名程の英語母語話者に実験協力をお願いすることが可能である。しかし、音声分析ソフトがインストールされていたパソコンの不具合、実験協力者との日程調整が取れない等の理由から、平成29年度に本実験を実施することが適わなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、英語音声学教材で頻出する音声変化(同化、連結、脱落)の例文を実験材料として、英語母語話者を被験者とした音声実験を行う。まずは、今回連携研究者をお引き受け頂いた都築正喜教授の勤務先である愛知学院大学で音声実験を実施する予定である。愛知学院大学に勤務している10名程度の外国人教師を対象に、発話速度と音声変化(同化、連結、脱落)の関係について明らかにする。もしこの時点で、実験が計画通りに進まないと懸念される場合は、実験音韻論の権威である大高博美教授(関西学院大学大学院音声学指導教授)からの指導をもとに、実験手法の調整を図る。その後、各大学を中心に英語母語話者の実験協力を仰ぎ、国内実験を進めていく予定である。実験結果については、国内外の学会での発表、論文投稿などを通して発信していく予定である。
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Causes of Carryover |
音声分析ソフトがインストールされていたパソコンの不具合、実験協力者との日程調整が取れない等の理由から、平成29年度に予定していた音声実験を実施することが適わなかった。その結果、予定していた旅費、英語母語話者への謝金などの経費が計上されていないことが理由である。なお、音声実験は平成30年度に実施予定であり、これらの経費は平成30年度に繰り越す予定である。
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