2017 Fiscal Year Research-status Report
Development of course materials of Sino-Japanese words including a long vowel: by analogy with the Chinese reading and utilizing phonetic elements
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17K02837
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
黒沢 晶子 山形大学, 学士課程基盤教育機構, 教授 (50375333)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 漢字音 / 音符 / 長音 / 清濁 / 中国語母語話者 / 非中国語母語話者 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度までの調査および教材の試用から明らかになっていたのは、中国語母語話者(C)の場合、母語字音と対応する字音については長短が類推できる一方、字音全体として誤読するのは、ピンインに頼りすぎたり、中国語の有気音を日本語の無声音と同じと見なす誤解のためだということであった。その結果、頭子音の清濁等をまちがえることが少なくなかったため、平成29年度は、清濁はピンインから判断できず(例:dao4 到 トウ、道 ドウ)、音符から類推することが有効だと認識できる教材の作成と試用を行った。 中国語母語話者(C)は、まずピンインから日本語の清濁が判断できないこと、次に既知の字が共有する音符をヒントに未知の字音が類推できることを学習する。非中国語母語話者(NC)も音符から清濁を類推する方法を学ぶ。長音・清濁学習後のテストでは、平均的学習者が未知字音の約8割に正答した。 Cの誤読の主因はピンインに頼ったことにあった。例えば、Cの全員が「侍」を「し」と誤読したが、テスト後のインタビューではピンインのshi からそう考えたと答えている。ピンインがshi の字には「使、始、氏、市、試」など、「し」と読む字も多いが、「じ」と読む「事、時」もある。そして、音符「寺」を共通して持つ「時、持」にも誰一人として気がつかなかったのである。これは、漢字を見たときのピンインへのアクセスがより自動的で強力でもあることを示している。一方、NCの場合は音符の利用のしかたが主な誤読の原因だった。例えば、「臆」を「い」としたのは、同じ音符「意」を含む「億」「憶」を思い出さず、「意」の字音をそのまま読んだためである。 未知字音を類推する際の音符の活用度はC 56%に対し、NC 90%と、NCのほうがはるかに高かった。それは、ほかに頼るものがないことから、音符が有効だと認め、利用しようとする意志が生じたためと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の計画通り、字音対照教材を補う音符活用教材(中国語母語話者対象・非漢字圏学習者対象)を増補・試用した(中国語母語話者(C)用教材 253字、非中国語母語話者(NC)用教材 215字。学習後テスト C 61字、NC 46字)。また、網羅的な音符基礎調査(音符になる要素とそれを含む字のリスト作成)を頭子音別で、カ・ガ・タ・ダ・ナ・ハ・バ・マ行音について行った(198の音符グループ、計673字を含む)。
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Strategy for Future Research Activity |
1 音符基礎調査・教材の拡充 2 網羅的な音符基礎調査を進める。(サ・ザ行音) 音符基礎調査および29年度に教材を試用した結果に基づき、字音対照教材と音符活用教材を改訂・試用する。 3 改善点 音符のうち、それを持つ漢字グループの字音が同じで活用度が高いものを先に学習し、複数の字音に分かれるものを後で学習するように、提出順序を工夫する。
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