2020 Fiscal Year Research-status Report
日本に定住・長期滞在する子どもの第二言語としての日本語能力に関する研究
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17K02846
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
西川 朋美 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (50456331)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 第二言語習得 / 年少者日本語教育 / 助詞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,幼少時から日本に定住・長期滞在している子どもの第二言語(L2)としての日本語力に焦点を当てる。日本で生まれ育ち,日本の学校教育を受けている子どもたちの日本語は非常に流暢ではあるが,実は弱点もあることを研究代表者のこれまでの研究では明らかにしてきた(西川ほか,2015,2016;西川・青木,2018;Nishikawa,2014,2019)。これらの研究は関係節及びコロケーションの理解や産出を対象としている。
本研究では,格助詞に注目し,4種類の格助詞(「が」「を」「に」「で」)の産出知識を測るためのテストを作成した。助詞の正確な使用を確認するために,テストの一部には語順交替をしたアイテムを含んでいる。
2年目のH30年度末に,L2日本語話者である子どもが多く通う公立小学校において全校調査(2校,計1300名)を実施した。3年目のH31/R1年度の前半は,テストの採点や結果の入力作業を行いつつ,調査対象となった子どもたちの背景情報(来日年齢など)の確認を実施し,データ分析を開始した。4年目のR2年度には,分析結果を投稿論文としてまとめ,1本は掲載済(『日本語教育』177号),1本が投稿中,1本が投稿準備中である。掲載済の論文においては,日本滞在歴5年以上のL2日本語の子どものみを分析対象としたところ,同年代の日本語モノリンガルの子どもとのテスト結果の間に有意差が見られたが,これは主に語順交替を伴うアイテムの結果の違いによるものであった。投稿中・投稿準備中の論文では,L2習得過程にあると考えられる滞在歴4年未満の子どもも含めた分析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果をまとめた投稿論文1本がすでに採択済であり,続けて投稿(準備)中である。
さらに,(本研究の主眼はL2にあるが)バイリンガル環境で育つ子どもの言語力については,第一言語(L1)とL2,両言語の能力のバランスを考慮すべきであると考える。そこで,中国語母語話者である研究アシスタントを雇用し,本研究(助詞)と先の科研費による研究(コロケーション)のテストの中国語バージョンを作成し,パイロット調査を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
調査実施済のL2日本語データの分析をさらに進め,論文投稿を行う予定である。
中国語バージョンのテストでのパイロット調査の結果についても,学会発表を予定しており,論文投稿につなげたいと考えている。
パソコン・心理実験ソフトを用いた研究についても,実施に向けての準備を検討中である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍による学会延期・中止,またオンラインによる学会参加のため,旅費が一切発生しなかったため。この点については,本研究を発展させる形で新たな研究課題も生まれているため,そちらの調査に有効活用する予定である。
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Research Products
(1 results)