2017 Fiscal Year Research-status Report
解釈学的ライフストーリーを用いた留学生にとっての日本語学習の意義の研究
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17K02855
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
中山 亜紀子 佐賀大学, 全学教育機構, 准教授 (20549141)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 日本語教育 / 留学生教育 / ライフストーリー / 解釈学 / リンガフランカ |
Outline of Annual Research Achievements |
1)今までに研究代表者が行ったインタビューの見直しを行い、その中から本科研のテーマである日本語、英語、母語の三言語以上の使用者のインタビューデータおよび、ストーリーを見直した。その上で、調査協力者にとって英語、日本語がどのような意味を持っているのかに考察を加え、口頭発表を行った。そこでは主に、日本語の言語的特徴がどのように研究協力者に認識されているのかに焦点を当てた発表を行った。 2)北米の日本語教育に関連する学会で、三言語を話す留学生にとって、日本語を話すこととは、どのような意味を持つものなのか、発表を行った。北米で考えられている日本語の魅力と日本国内や東アジアでの日本語の魅力そのものが大きく異なっているという指摘があった。 3)海外の大学に滞在し、そこで、質的研究方法、批判的応用言語学の研究者とディスカッションを行った。さらに、文献調査を行った。その結果、解釈学的質的研究は、その方法の一つとして加えられてはいるが、その背後にあるのは、調査者を消し去り、現象の本質を取り上げようとする哲学があること、研究代表者が行っている解釈学的ライフスト―リー法は、どちらかといえば「reflexivity」という用語で表されているものに近く、応用言語学でも比較的新しく用いられている概念であることがわかった。その成果の一部については、佐賀大学全教育機構紀要に発表した。 3)批判的応用言語学を学んだことで、分析視覚がひろがった。 4)滞在していた海外の大学で口頭発表を行い、多くの有益な指摘を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目標は、英語や母語、あるいは第3の外国語との比較の中で日本語学習をとらえることで、そのために初年度はStudy Abroadに関する文献を渉猟することことが目標であった。幸い、英語圏の高等教育機関で半年近く受け入れてもらうことができ、多くの英語で書かれた文献に接することができ、さらに現地の教員ともディスカッションでき、近年のStudy Abroadをめぐる調査方法や研究視覚について学ぶことができた。特に批判的な視点を学ぶことができたのは大きな収穫であった。外国語教育の目標を考えることも本研究の目標の一つだが、個人や国に経済的な利益をもたらすこと以外の外国語教育の目標を考えるためには、言語を学ぶという行為自体を疑う必要があり、権力関係や構造化された不平等を問題視する批判的応用言語学の視点は不可欠だと考える。またその視点を取り入れた投稿論文(投稿中)を執筆することができた。 しかし、Study Abroad研究をまとめるという目標については、充分に達成したとは言いがたい。今後、より計画的に研究を進め、本研究の目標を達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は、文献調査は大幅に進んだが、その代わり、インタビューとストーリー作成は、順調に進んでいるとは言い難い。そのため、今後は、インタビュー調査を実施し、当初の目標の数のストーリーを得たい。 さらに、収集してきた文献を読み込み、Study Abroad研究の動向についてまとめ、国内外の学会で発表する。さらに、ライフストーリー法についてReflexivity(再帰性)をキーワードとした考察をまとめを行い、発表を行う。
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Causes of Carryover |
海外の滞在先からの帰国が、予定より早まったため、当該年度の資金を使い切ることができなかった。次年度はこの資金をもとに、海外文献などを購入する予定である。
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