2017 Fiscal Year Research-status Report
いきいきとした介護のオノマトペ使用のための学習映像教材の開発に関する研究
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17K02857
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Research Institution | Tokyo University of Social Welfare |
Principal Investigator |
神村 初美 東京福祉大学, 教育学部, 准教授 (80764654)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西郡 仁朗 首都大学東京, 人文科学研究科, 教授 (20228175)
小平 めぐみ 国際医療福祉大学, 医療福祉学研究科, 准教授 (00611691)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 介護のオノマトペ / 場面・動作依存 / 使用使途依存 / 外国人介護人材 / 利用者からの訴え / 痛みのオノマトペの不理解 / ベテラン介護士のオノマトペの使い方 / 介護のオノマトペのデータ化 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、「介護の基本オノマトペの選定とその場面及び必要条件の解明」という指針のもと、1).介護現場で頻出するオノマトペ及びその使用場面と必要条件の抽出、2).EPA候補者による作例オノマトペの正用・誤用の実態調査とその分析、3).1).2).の統合データから学習映像教材のデータベース構築のための基礎データの作成、を具体的な実施項目とし、それに則した研究活動を行った。1).においては、既存インタビューデータを先行文献書籍と照合し、分析した結果、以下が得られた。まず、介護現場のオノマトペは,想定される介護の場面や動作によって使用されるタイプ(以下「場面・動作依存」)と、行為の目的によって使用されるタイプ(以下「使用使途依存」)に上位分類されることが分かった。また、「場面・動作依存」は、【口腔ケア】【服薬・投薬ケア】【トイレ介助】【食事介助】に、「使用使途依存」は、【痛みの伝達】【利用者の様子や状態の確認】【状況の伝達】【利用者からの訴え】【作業の指示】に下位分類された。「場面・動作依存」は、特定の場面での被介護者の機能回復を促す動作性への動機付けが示された。「使用用途依存」は、特に被介護者から介護者に向けられる「利用者からの訴え」で[痛みのオノマトペ]が顕著に見られ、その重要性が窺われた。しかし、外国人介護人材からは、この「利用者からの訴え」の[痛みのオノマトペ]が特に分からないと示されたところから、[痛みのオノマトペ]の不理解が浮き彫りとなった。また、経験豊富な介護職員は、専門的な知識に裏付けられた経験知をもって、介護のオノマトペを柔軟に操作していることが分かった。2).3).においては、EPA候補者64名分の既存データから正用・誤用を検証し、その結果を丁美貞氏の協力のもとにエクセルデータ化した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の取り組みから、外国人介護人材の利用者からの訴えによる[痛みのオノマトペ]の不理解が浮き彫りとなった。また、経験豊富な介護士は、専門的な知識に裏付けられた経験知をもって、介護のオノマトペを操作していることが分かった。一方、急きょ2017年9月、モンゴル国において技能実習生への介護のオノマトペ支援を視野に入れ、[痛みのオノマトペ]における実態調査を行うこととした。また同時に技能実習生送り出し機関での見学とヒアリング調査を行うこととした。これは2017年11月1日の技能実習制度「介護」枠の施行に伴い、モンゴル国が覚書書を締結する(2017年12月締結結実)との状況に基づき、モンゴル人介護人材の来日を見越したことによる。上述した得られた知見を、技能実習生の介護人材への支援に活用するために素早い対応を図ったものである。モンゴル国での [痛みのオノマトペ]の習得状況調査から、①体の症状を表す「ごろごろ」「ずーん」は、モンゴル人超級日本語学習者による高い類推力をもってしても認識には浅い理解や揺れが見られる。それは、②既習事項の功罪、③体調を表すオノマトペは未習事項、④モンゴル語で介護の言葉は僅少によるものであり、これらの影響から意味把握には限界があるということが分かった。また、技能実習生送り出し機関での授業見学及びヒアリングから、事前日本語研修の概要の把握が叶い、介護のオノマトペについての学習は皆無に等しいことが分かった。ここから、モンゴル人技能実習生介護枠者の来日後研修において、いち早く「介護のオノマトペ語彙」を、①既習事項の功罪、②モンゴル語で介護の言葉は僅少という背景を踏まえながら指導する必要性が窺われた。上述の【研究実績の概要】で記した研究成果、および急きょ行ったモンゴル国での調査結果は各種の研究会で研究発表を行うとともに、日本語教師研修において広く公開した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、以下のように進めていきたい。 Ⅰ. ①.介護の頻出基本オノマトペ語彙、②.①.が使用される場面、③.①.と②.の必要条件の3つの観点からの施設ヒアリング調査を2018年6月にもう一度行い、既存データと合わせる。ここから、介護現場での就労に際し優先的に学ぶべき①.基本介護のオノマトペ語彙、②.①.の使用場面、③.①.と②.の必要条件を2018年8月には確定する。 Ⅱ.Ⅰの調査データを基に、①.介護の基本オノマトペ語彙、②.①.の分かりやすい日本語解説とその翻訳、③.①.を用いた介護の例文と介護の場面に基づいた会話文、④.①.の使用を促す練習課題を含むデータベースを2018年8月から始め2019年2月ごろに完成させる。 Ⅲ.開発の各段階で行う検証、試用及び事前事後のヒアリングを通して、初級レベルからのオノマトペ習得の必要性とそのニーズを明らかにし、それに基づいて外国人介護人材に有用な介護のオノマトペの学習映像教材試行版(日本国の介護人材への動向を鑑み試行版とする)の機能設計を2018年9月から行い、2019年2月に完成させ、業者委託する。 Ⅳ.Ⅱ、Ⅲに基づき、外国人学習者がインターネットを介して利用可能な、介護のオノマトペの学習映像教材試行版を2019年6月に開発完了させ、その学習効果を2019年8月―9月をめどに検証する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、国内調査旅費の未使用に伴うものである。これは、大学を異動したことに由り、異動先大学の学内業務に慣れるのに時間を要したという環境の変化、および学内業務が多忙を極めたという時間的余裕のなさから、当初予定していた国内研究調査に赴く時間がなかなか捻出できなかったといった背景に起因する。新しい環境や業務内容に慣れるのには、想像以上の時間を要した。そのため、時間の捻出が難しい状況を打開できず、結果、綿密な計画と相互の調節をともなう日本国内の介護施設を対象とした調査に赴くことが不可能な状況であった。平成30年度も多忙に変わりはない。しかし、平成29年度、既に保有していたデータを綿密に省察するという対応の切り替えの工夫で科研の進め方を図ったことによって、新たなる知見を得ることもできた。そこで、平成30年度も創意工夫を重ね、6月と8月の2度に分け時間を捻出し対応を図る計画である。この期間に平成29年度に叶わなかった国内調査を行い、研究を進めていく。外国人介護従事者の増加は喫急の課題であるところから、速やかに、そして着実に先に示した【今後の研究の推進方策】に沿い、研究を進めていく。
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Remarks |
[わくわく たのしいオノマトペ]日常生活で頻繁に使用されるオノマトペを映像、文字テロップ、そしてナレーションをもって提示することによって、オノマトペの使用場面と適切な使用を促すことを目的とした日本語オノマトペの学習映像教材
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Research Products
(30 results)