2019 Fiscal Year Research-status Report
大学日本語教育プログラムを対象とした開発型評価ー持続可能で有用な開発型評価とは
Project/Area Number |
17K02863
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
小澤 伊久美 国際基督教大学, 教養学部, 課程上級准教授 (60296796)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 伸子 立教大学, 異文化コミュニケーション学部, 教授 (30294987)
丸山 千歌 立教大学, 異文化コミュニケーション学部, 教授 (30323942)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 開発型評価 / 日本語教育 / 大学 / 持続可能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、大学の日本語教育部門における開発型評価(Developmental Evaluation: DE)の実践をメタ評価し、①DEが当該プログラムの発展に寄与しているか、②DEを成功に至らしめる要因は何か、③DEを持続可能な形で実践するための要因は何か、を明らかにすることである。また、DE実践時に参考になる記述の在り方を検討することも目的としている。 令和元年度の取組みは以下の通りである。(1)評価的思考によってプログラム改革を促進する方法について評価学の専門家らと議論を深めた。その中で、DEを理解する内部評価者の存在の重要性が確認された。(2)評価学の専門家を招聘して公開ワークショップを開催し、DEを進める重要性を啓蒙するとともに、DEを促すファシリテーションの在り方について考察した。(3)本研究課題の対象プログラムの関係者に、質問紙調査と聞き取り調査を実施した。その結果、DEが関係者各自の学びに結びついており、DEの結果として組織が良い方向に発展したと当事者が感じていることが明らかになった。(4)複線径路・等至性アプローチ(TEA)の理論面の理解を深め、プログラムの変容を記述する上で、変容を促進・抑制する力を個人と集団のレベルに分けて検討したり、当事者のイマジネーションの働きを考察に組み込んだりする必要があることが明らかになった。 現時点での本科研費研究課題の目的達成度だが、DEは当該プログラムの発展に寄与していることが確認でき、DEを成功に至らしめる要因及びDEを持続可能な形で実践するための要因もほぼ明らかにできたと考える(丸山・小澤・池田2017、小澤・丸山2020)。しかし、DE実践時に参考になる記述の在り方についてはまだ検討の余地がある。また、DE実践家である日本語教師のコンピテンシーを明らかにする必要性が浮上したが、その議論も途上である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究は進んだが、年度末までに公開を予定していた「複線径路・等至性アプローチを活用したプログラムの変容の記述」と「開発型評価(DE)の実践家のコンピテンシー案」を公開に適するレベルまで考察することができなかったため、当初計画よりも実施が遅れていると考える。 進捗が遅れた理由には、DEの実践をメタ評価し、中間報告をまとめる際の方向性について、評価学の専門家から、紆余曲折の状況を含める形でなければ組織の成長が見えず、また、DEの貢献が明らかになりにくいという助言を受けたことが大きな理由としてある。それに加えて、相手に伝えるためにはコミュニケーションデザインの知見を組み込み、見せ方の工夫をさらに加える必要があるという気付きを得たことからも報告をまとめるのにさらに時間をかけて検討することになった。 また、DEを導入し持続させる方法については考察を終えており、令和元年度末から令和二年度にかけていくつかの学会で口頭発表をする予定でもあった。しかし、新型コロナウィルス感染拡大の影響を受け、複数の学会が中止・延期になるなど、成果を公表することができなかった。研究成果については何らかの方法で公開していきたい。 なお、「複線径路・等至性アプローチを活用したプログラムの変容」と「DEの実践家のコンピテンシー案」の記述と公開についても、令和二年度はこれらの点に注力して研究を推進し、実現可能であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は以下の2点に焦点をあてて研究を進める。 1)複線径路・等至性アプローチを活用したプログラムの変容の記述に取り組み、論文や口頭発表などの形で研究成果を発表する。 2)大学日本語教育部門における開発型評価に求められる実践家のコンピテンシーについての考察を論文や口頭発表などの形で発表し、そうした実践家の育成について、日本語教育学や評価学の研究者及び実践家らと議論の場を設ける。
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Causes of Carryover |
研究開始以後、研究対象となっているプログラムの置かれた状況が変動し、海外に赴いて情報を収集するよりも国内での調査や内外の専門家らとの討議の場を優先する必要性が高いと判断された。さらに、学会の開催時期と研究の進捗状況を鑑み、令和元年度よりも令和二年度に開催される国内・海外の学会で研究成果について専門家ら議論することが望ましいと考え、旅費の使用を次年度に繰り越す形となった。
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