2017 Fiscal Year Research-status Report
'Plurilingual child-rearing' by overseas Japanese residents - from an interview survey on Japanese residents in Ireland
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17K02870
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
稲垣 みどり 早稲田大学, 国際学術院, 助手 (70769786)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 複言語育児 / 在留邦人 / アイルランド / 継承日本語教育 / 教育戦略 / ライフストーリー |
Outline of Annual Research Achievements |
国境を越えた移動が日常化している現在、海外に居住する日本人は増加し、その結果両親もしくは片親を日本人として海外で出生し、成長する子どもの数も増加している。これらの子ども達は日本語を含む複数言語文化環境の中で成長している。海外在留邦人の親たちは、どのような教育意識のもとに、これらの子ども達に日本語を含む複数言語を介する育児をしているのか。本研究は言語教育を軸に、異文化間移動を繰り返す在留邦人たちの育児の営みを、個人の主観的な意識というミクロの次元で明らかにする。分析概念として、育児そのものが言語実践であるという立場から「複言語育児」の概念を新たに立て、従来の継承日本語教育、教育戦略といった学習機関における言語教育にフォーカスいた先行研究とは一線を画した立場で、日本国外の複数言語環境で子どもを育てる親たちの複言語育児の在りようを明らかにする。 海外に居住する在留邦人の複数言語を介した育児である「複言語育児」の在りようを明らかにするため、アイルランドを事例に以下の2つのリサーチクエスチョンを立てて研究を実施した。①アイルランド在住の日本人の親たちはどのように「複言語育児」を実践しているのか。②その「複言語育児」の実践は、親のどのような教育意識のもとに実践されているのか。またその親の教育意識は、どのように形成されたのか。①については親達に対する半構造化インタビューおよび育児実践の参与観察をした。②については親達に対するインタビュー、特にライフストーリーインタビューを実施した。 現在までに、13名の在アイルランドの在留邦人の親たちを対象に、のべ27回のインタビューを実施した。13名のうち、5名には縦断的な調査のために複数回数のインタビューを実施した。2017年1月と2018年5月には、アイルランドで親を対象とした講演やワークショップも開催し、研究成果を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題が開始した2017年4月より計4回、アイルランドで現地調査を実施した。当初の研究計画(現時点までに現地調査を2回実施)よりは多く足を運び、インタビューの回数も多く実施した。「複言語育児」の参与観察は2回実施したにとどまるが、在留邦人の親たちを対象としたライフストーリーインタビューは研究計画の通りに実施した。
インタビュー調査で得られたデータをもとに、学会発表も2回行った。学会発表を踏まえた論文も現在執筆中である。また、アイルランドの現地の在留邦人の親たちおよび補習授業校の講師を対象に、「複言語育児」をテーマにした講演およびワークショップを、調査フィールドのアイルランドで2017年1月と2018年5月の2回開催した。調査フィールドにおける講演およびワークショップにおける研究成果の発信を通じて、研究成果を現地で発信し、子育ておよび教育の実践の現場に還元した。「複言語育児」の実践者である親、および日本語を含む複言語を学ぶ子ども達に日本語を教える講師たちに研究成果を発信することにより、今後の研究の方向に対して有意義なフィードバックを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、今年度中にあと1回、来年度は2回、アイルランドで現地調査を実施する。さらにインタビュー調査を重ね、多様なインタビューデータの収集に努めたい。また今年度の後半および来年度中に、「複言語育児」の参与観察を、あと2回は現地で実施する予定である。
また最終年度の来年は、さらに研究成果の発信に努める予定である。具体的には、「複言語育児」をテーマとした論文の発表および国内外の学会での発表を予定している。当初の予定どおり、国際的な教育の課題を扱う国際的な学会とシンポジウムでの発表をさらに重ねていきたい。また、学会等で研究者や大学関係者等の学術関係者に対してのみ発信するのでなく、育児の実践者である親たちを対象とした講演やワークショップを開催していく予定である。
今年度は親を対象とした講演、ワークショップはアイルランドのみで開催したが、今後はアイルランドのみでなく、日本国内においても「複言語育児」をテーマとした親を対象とするワークショップや講演会を開催していく。日本語を含む複数言語環境で子どもを育てる親への支援を、日本語教育の課題の1つとして国内外で広く展開していく予定である。そのため、現在、日本語教育のみでなく、哲学、公教育、共生社会論、人権論、社会福祉などの専門家および研究者たちと、学際的な共同研究会に参加して研究を進めている。今後は日本語教育として展開している「複言語育児」の研究課題を、学際領域に広く開いていく予定である。
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Research Products
(2 results)