2017 Fiscal Year Research-status Report
デジタルネイティブ世代「不読」留学生の「読む」活動を支援する教育プログラムの開発
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17K02873
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
脇田 里子 同志社大学, グローバル・コミュニケーション学部, 准教授 (20251978)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 読書 / 不読者 / 活字離れ / 印刷書籍 / 電子書籍 |
Outline of Annual Research Achievements |
留学生の「読む」活動に関する実態について、アンケート調査を実施した。2017年6月から7月にかけて、2つの大学の学部留学生219名から回答を得た。その結果、1日の読書時間が0分の割合は、大学生協の日本人学生(2017)の49.1%と比較し、本調査による留学生(25%)はその半分だった。1か月に1冊も本を読まない者は「不読者」と呼ばれている。文化庁(2014)の調査では、16-19歳の日本人不読者の割合は42.7%であった。本調査による留学生不読者は24%で、文化庁(2014)と比べ、10%以上少なかった。以上、学部留学生は日本人の読書離れよりは少ないものの、学部留学生の4人に1人は不読者であることがわかった。 さらに、2017年11月から12月にかけて、アンケート調査に協力した人文系学部留学生25名に、読書に関するフォローアップ・インタビューを実施した。その結果、注目に値する点は、「読書は何語で読んでいるのか」という問いに対し、68%の留学生が母語のみと回答したことである。日本語は16%で、日本語と母語は16%であった。読書をしているといっても、約7割の留学生は母語のみであった。また、日本語での読書が難しいと感じている学生は84%であった。その要因は、漢字の読みと意味、縦書きの日本語文章を読むことの不慣れ、留学生が日常生活で使用しない語彙(略語、若者ことばなど)という回答に集約される。 これらの調査結果をふまえ、学部留学生に対する日本語による読書活動の推進を検討したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度は学部留学生の「読む」活動に関する実態調査(219名)が主な研究であった。同じアンケート調査を日本人学部生294名にも実施した。毎日新聞社の読書世論調査や文化庁の国語に関する世論調査の中の読書に関する調査と同じ質問項目を多く取りあげた。しかし、アンケート調査結果から言えることは、読書活動に対する大まかな傾向であった。 次に示した読書活動の細かい点について、不明瞭であったことを反省している。(1)趣味としての読書とレポート作成などの勉強のための読書に違いはあるのか。(2)何語で書かれた書籍を読んでいるのか。書籍のテーマ分野によって、言語を切り替えているのか。(3)電子書籍を読む場合、その媒体機器は何か。書籍のテーマ分野によって、電子書籍の媒体機器の使い分けをしているか。(4)余暇時間に何をするか。余暇時間の中で読書の位置づけはどこか。(5)これまでの読書活動の経験はどのようなものか。(6)読書活動を推進する、または、阻害する要因は何か。 こうした点について、25名の留学生にフォローアップ・インタビューで確認はしたが、アンケート調査として不十分であった。そこで、学部留学生を対象に、2018年度にアンケート調査を再度行うことも検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度の計画は、大学生の活字離れや読書離れの対策に関する先行研究の収集と分析である。その中の1つとして、新聞記事を教育に活用するNIE活動について取り上げてみる予定であった。しかし、新聞よりも先に、外国語としての日本語による読書活動、とりわけ、多読に関する教育について調査する。日本語教育においては、初級から中級レベルにおいて、多読の先行研究が盛んに行われている。上級以上のレベルについては、多読の観点よりも、ピア・リーディングやクリティカル・リーディングの観点からの研究が多いように思われる。多読の観点から読書活動の推進を考えてみたい。 また、「本はこう読め」といった読書術や読書論に関する著作が多く出版されている。そうした著作、あるいは、大学図書館が作成している「読書案内」などから読書の楽しみ方、意義、本の読み方などの要素を抽出し、教育実践に応用できるか、分析する。 なお、印刷書籍と電子書籍の読書の違いについても検討する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、パソコン(調査票の作成・集計などで利用する)を購入予定であったが、機を逃して、購入を見送っていたためである。そこで、新年度(2018年4月に)になり、すぐに、パソコンを購入した。
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Research Products
(1 results)