2019 Fiscal Year Research-status Report
デジタルネイティブ世代「不読」留学生の「読む」活動を支援する教育プログラムの開発
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17K02873
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
脇田 里子 同志社大学, グローバル・コミュニケーション学部, 准教授 (20251978)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 読書教育 / 新書 / ピア・リーディング |
Outline of Annual Research Achievements |
1年間に渡って、リーディングの授業(1年生の必修科目、春・秋1コマ、2クラス体制、受講生は春学期34名、秋学期31名)の中で、テキストを用いた読解の他に、読書活動推進を目的にした「新書プロジェクト」を実施した。 このプロジェクトは、春学期に1冊、秋学期に2冊の新書をピアで読み合うものである。毎週、授業外で、新書を30ページ前後読み、学習者は読んだ内容について、読書シートにまとめた。授業時間の約15分、読んだ内容についてピアで話し合った。1冊を読み終えた後、その書評を書いた。教員は書評集を作成し、学習者はそれを読んだ。また、授業期間に1回、読んだ本についてピアで発表した。新書3冊のうち、春学期と秋学期の各1冊は教員が作成した推薦新書の中から選び、秋学期の残り1冊は学生達が選んだ。ピア活動の人数は、春学期は2名だが、秋学期は3~4名に変更した。新書は電子書籍化が進んでいるため、2冊目の新書は電子書籍で読むことを強く推奨した。教員の役割は、推薦新書のリスト作成、学生が毎週、書き込む読書シートの作成と提出管理、書評集作成である。学習者同士のピア活動の内容に教員は基本的に介入しなかった。5月に授業外イベントとして、日本人学生の読書サークルとの交流イベントを実施した。 実践の結果についてアンケート調査の結果から述べる。実践前、ピア・リーディングの経験がない学生が87%を占め、日本語の本1冊を読んだ経験のない学生は62%であった。実践後、ピア・リーディングの活動がうまくいったと回答した学生は70%で、日本語の本1冊を読んで達成感を感じた学生も70%であった。自由記述コメントにおいても、全体として、7割近い学生が肯定的な回答をしていることから、ピア活動を通じた読書活動はうまくいったと思われる。今後、3割近い学生の読書活動がうまくいかなかった原因を分析し、プログラム改善を検討したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
主な理由は2つある。1つは、父親が2019年に亡くなったことが挙げられる。帰省することが多くなり、研究の時間を確保することが難しくなった。もう1つは、授業実践のデザインがあまり適切ではなかったことが挙げられる。2019年度は授業の一部を使って読書活動を行った。しかし、授業の大部分はテキストによる読解であったため、学生の関心は成績評価の割合の高い読解の教科書の理解にあった。そのため、学生にとって、読書活動は付加的な活動と捉えられ、読書活動にあまり取り組まない学生も見られた。2020年度は、その点を反省し、授業の大部分を使ってプログラムを実施したい。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は2019年度と異なる授業デザインで実施する。読解の教科書を使った内容理解を目的にした授業は行わず、授業は読書活動を中心にする。最初に、読書術に関する書籍を読み、本の読み方を学んだ後、ピアで新書を読んでいく。また、テーマを決めて、そのテーマに関する新書を学生が選んで読むこととする。
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Causes of Carryover |
2019年度の研究成果が芳しくなかったため、学会発表などの回数が少なく、旅費をあまり使用しなかった。2020年度は学会や研究会での発表を増やし、旅費の使用を増やしたい。 2020年6月に大学教育学会(九州大学にて)と2020年8月に、ヨーロッパ日本語教師会学会(ベルギー、ゲント大学にて)発表が確定している。しかし、大学教育学会はオンライン開催に、ヨーロッパ日本語教師会学会は2021年に延期された。
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Research Products
(1 results)