2017 Fiscal Year Research-status Report
文化言語の多様な子どものための対話型アセスメントの教育的効果に関する実証研究
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17K02875
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
櫻井 千穂 同志社大学, 日本語・日本文化教育センター, 准教授 (40723250)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
真嶋 潤子 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 教授 (30273733)
渡部 倫子 広島大学, 教育学研究科, 准教授 (30379870)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | DLA / 対話型アセスメント / スキャフォールディング |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度に当たる平成29年度は、文化言語の多様な子どもの複数言語教育に資する「対話型アセスメント」のあり方を探求するため、「外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメントDLA」の<読む>におけるミクロ・スキャフォールディング(Scf)の構造解明を試みた。国内外の先行研究を踏まえた上で、過去に収集した対話型アセスメント<読む>の音声データ365本から 9172 の Scf を抽出・分析したところ、 Scf 必要度が高い低年齢児の場合「登場人物確認」、子どもの発話を繰り返す「発話反復」と「絞り込み質問」の併用、子どもの発話の「言い換え・付け足し・要約」の後の「促し」が効果的であることがわかった。また情意面の「褒め」や「肯定・納得」「待ち」も頻出している様子が確認できた。高学年では「詳細求め」や「意見求め」、「肯定」と「反論」の併用が効果的であった。一方で、子どもからの「未出の情報に基づく質問」や「曖昧な促し」、一方的な「知識伝授」は半数以上で否定的な結果を誘発することが確認できた。 以上の構造分析と並行して、DLA実施者に対して対話型アセスメントの教育的効果に関する質問紙(パイロット)調査を実施した。これらの結果から、対話型アセスメントにおけるScfと実際の授業における教師の発問調整との間に関連性があることが示唆されたため、アセスメント実施者の養成にてScfの方法に焦点をおいた研修を実施した。また複数の研究協力校で対話型アセスメントを活用した授業実践を行うことで、教育現場への還元に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画は以下の4つであった。 1)Scf研究、評価に関する研究の国内外の先行研究に関する文献調査 2)DLAデータのテキストマイニング, 有効なScfをコード化し抽出後, 質的に分析 3)研究協力校・機関との研究協力体制の構築と研究計画の確認 4)対照実験による実証 上述の通り、1)、2)は計画通り実施し、その成果について学会発表を行った。3)は兵庫県・愛知県・広島県の複数の学校で対話型アセスメントを取り入れた教育実践をスタートした。4)は調査方法の変更はあったが、対話型アセスメント実施者への質問紙調査という方法で実施した。よって、おおむね順調に進展しているものと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定していた対話型アセスメント<読む>におけるミクロ・スキャフォールディングの分析が順調に進んでいるため、平成30年度は、マクロ・スキャフォールディングの一つとなるアセスメント構造としての「テキストレベル」の妥当性に焦点を当てた研究を行う。そのため、新しい研究分担者に統計の専門家である名古屋大学名誉教授の野口裕之氏を迎える予定である。DLAで用意されているテキストは7冊のみと、経年指導には不十分であるため、本研究を通して、DLAの代替えテキストの開発を目指す。 さらに、平成29年度に引き続き、兵庫県・愛知県・広島県の研究協力校において、対話型アセスメントを活用した授業実践をしてもらい、インタビュー調査等から、その教育的効果を検証する。
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