2017 Fiscal Year Research-status Report
在日留学生の変容と日本での生活・対人関係・就活:中韓以外の学生の増加と長期滞在化
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17K02877
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
守崎 誠一 関西大学, 外国語学部, 教授 (30347520)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内藤 伊都子 東京福祉大学, 教育学部, 准教授 (90569708)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 在日留学生 / 就職活動 / 異文化適応 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本企業に就職が内定したベトナム人留学生4名(男性1名、女性3名)と中国人留学生2名(男性1名、女性1名)を対象に、半構造化インタビューを実施した。その結果、日本で就職を希望した時期・理由については、両者の間に比較的共通する結果が得られた。就職活動に関する情報源についても比較的共通していたが、自国人との情報交換が中国人の間ではあまり見られないという違いが見られた。このほか、就職活動での困難・日本人学生との違いについては、中国人が日本人と比較的同じように就職活動ができることが、逆に日本人学生と対等に競争しなければならないことにつながり、ベトナム人とは異なる中国人独特の困難や日本人との違いの意識を生んでいることが明らかとなった。これら調査結果については、平成30年6月開催の日本コミュニケーション学会年次大会で発表を予定している。 大学・専門学校の就職支援室に勤務する4名(男性1名、女性3名)の職員に対して、約2時間の半構造化インタビューを実施した。その結果、日本での就職を希望している学生のうち、日本でずっと働きたいと考えているのは6割程度で、残りの4割の学生は日本での経験を積んだのちに帰国をしたいと考えている。性別に関しては、男子学生の方が女子学生よりも日本での就職を希望する率が高い。出身国別では、日本での就職希望の割合が高いのは中国からの留学生で、近年になってベトナムからの留学生の就職希望が増えてきている。しかし、中国からの留学生については、帰国希望の割合がかつての2割から約3割に増加している。希望する職種については、教育機関や貿易会社の通訳、翻訳通訳業務などへの就職を希望することが多く、母国との間で母語と日本語を使った仕事に携わることを希望することが多いことなどが明らかとなった。これら調査結果については、平成29年9月開催の多文化関係学会年次大会で発表をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、(1)既に先行して実施してきた留学生を対象とするインタビュー調査を継続するとともに、(2)留学生の就職支援をおこなっている学校職員へのインタビュー調査を実施し、(3)それら質的なデータの蓄積を基にして、次年度に実施する質問紙調査に向けての質問項目の精査などの作業をおこなうことを目標とした。 (1)の留学生を対象とするインタビュー調査については、日本企業に就職が内定した複数の留学生に対する調査を実施することができた。調査対象者についても、これまでも比較的多かった中国人の留学生と近年増加傾向にあるベトナム人を対象に調査することができ、中国人とベトナム人の間の違いについても検討することができた。調査結果については、学会での口頭発表のかたちにまとめることができた。また、同様のインタビュー調査を年度をまたいで引き続き実施中である。 (2)の留学生の就職支援をおこなっている学校職員へのインタビュー調査についても、就職支援室に勤務する複数の職員に対して、半構造化インタビューを実施することができた。それら調査結果については、学会での口頭発表のかたちにまとめることができた。 これに対して(3)の次年度に実施する質問紙調査に向けての質問項目の精査などの作業については、必ずしも十分な成果を得ることができなかった。(1)および(2)がいずれもインタビュー調査であるため、調査協力者との面接日程の調整等に時間がかかるなど、(1)と(2)の実施を優先したためであるが、来年度の早い段階で質問紙調査に向けての質問項目の精査などの作業を終える必要があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度より継続的におこなったインタビュー調査に対する分析結果を論文にまとめ、投稿をおこなう。 それらインタビュー調査結果を基に、質問項目や回答に際しての選択肢を作成・選別をおこない、質問紙調査の実施に向けての準備作業をおこなう。作成した質問紙は、7言語(ベトナム語、ネパール語、ミャンマー語、クメール語:カンボジア人用、中国語簡略字:大陸出身者用、中国語繁体字:台湾出身者用、韓国語)に翻訳する。その際、バックトランスレーションの方法を用いてその言語間の整合性を確保する。 3大都市圏(関東、中部、関西)に留学している学生(約600名)に対して質問紙調査を実施する。具体的には、日本語学校、専門学校、大学・大学院で質問紙の配布・回収をおこなう。 その後、回収された質問紙の量的調査部分のデータの入力作業をおこなう。加えて、ベトナム語、ネパール語、ミャンマー語、クメール語(カンボジア)、中国語(簡略字・繁体字)、韓国語、英語による自由記述の回答を、各言語を母語とする大学院生と大学院修了者を使って、分類・整理・翻訳をおこなう。 それら量的なデータに対する試行的な分析を開始するとともに、質的なデータとの融合と説明モデルについての検討を開始する。
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Causes of Carryover |
平成29年度の人件費・謝金に大きな残額が出た理由としては、日本での就職に内定を得た学生とのインタビューが、年度内にすべて実施できなかったことによるものである。引き続き平成30年度にも継続的にインタビューをおこなう予定をしており、その際の謝金に充当する。加えて、平成29年度内に質問紙の翻訳・バックトランスレーション作業をおこなう予定であったが、質問紙の作成が遅れていて翻訳作業に入ることができなかった。平成30年度の早い段階で翻訳作業を開始して、その際の人件費に充当する。 平成30年度分として請求された予算は、3大都市圏(関東、中部、関西)に留学している学生を対象とする質問紙調査を実施する際の研究協力者への謝金、数値データの入力作業や自由記述データの翻訳に必要な人件費に充当される。また、研究成果を学会・研究会等で発表する際の旅費・宿泊費に充当される。
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