2018 Fiscal Year Research-status Report
在日留学生の変容と日本での生活・対人関係・就活:中韓以外の学生の増加と長期滞在化
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17K02877
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
守崎 誠一 関西大学, 外国語学部, 教授 (30347520)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内藤 伊都子 東京福祉大学, 教育学部, 准教授 (90569708)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 在日留学生 / 就職活動 / 異文化適応 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本企業に就職が内定した中国人男性1名に対する半構造化インタビューを実施して、前年度に収集したベトナム人留学生4名(男性1名、女性3名)と中国人留学生3名(男性1名、女性1名)のデータと合わせて分析をおこない、その結果を日本コミュニケーション学会年次大会(2018年6月9日)で発表した。具体的には、(1)日本での就職を希望した時期・理由、(2)就職活動に関する情報源、(3)就職活動での困難・日本人学生との違い、(4)課外活動・日本人との対人関係などについて、ベトナム人留学生と中国人留学生の間での比較分析をおこなった(一部、学部生と大学院生の比較を含む)。 本研究の実施期間の間に生じた在日留学生の日本での就職に関わる大きな変化として、2018年12月8日に「出入力管理及び難民認定法」が改正され、「特定技能」の1号と2号という新たな就労目的の在留資格が設置されたことがある。今回の改正が在日留学生の日本での就職活動にどのような変化をもたらすのかについてまとめた内容を日本コミュニケーション学会関西支部大会(2019年3月23日)で発表した。具体的には、本来「労働者」ではない留学生が、日本の多くの現場(コンビニ、居酒屋、弁当工場、清掃など)でなくてはならない労働力となっている現状(コンビニ大手3社だけで5万2千人(全従業員の5~8%)が留学生)について考察した上で、卒業・修了後に引き続き日本に滞在し続けることを志望する外国人留学生が増加(全体の63.6%)しているのに対して、実際に日本で就職できている留学生は全体の30.1%であり、この数を将来的に50%に上げることを目指す動きに伴って、今後どのような変化が生じるのかについて考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2018年度は、(1)前年度より実施してきた留学生を対象とするインタビュー調査を継続するとともに、(2)前年度に実施した留学生の就職支援をおこなっている学校職員へのインタビュー調査の結果と(1)のデータを基にして、質問紙調査に使用する質問紙(ベトナム語、ネパール語、ミャンマー語、クメール語(カンボジア)、中国語(簡略字・繁体字)、韓国語、英語を予定)の作成と調査の実施を目標とした。 (1)の留学生を対象とするインタビュー調査については、日本企業に就職が内定した複数の留学生に対する調査を実施することができた。調査結果については、日本コミュニケーション学会年次大会(2018年6月9日)で発表した。また、同様のインタビュー調査を年度をまたいで引き続き実施中である。 しかし、(2)の質問紙調査に向けての質問紙の作成と調査の実施については、完遂することができなかった。そのため、来年度の早い段階で質問紙調査を終える必要があると考えている。 これに対して、2018年12月8日に「出入力管理及び難民認定法」が改正され、「特定技能」の1号と2号という新たな就労目的の在留資格が設置されたことに伴う変化について、日本コミュニケーション学会関西支部大会(2019年3月23日)で発表をすることができたことは、予定になかった成果であった。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度より継続的におこなってきたインタビュー調査データに対してより詳細な分析(テキストアナリシスならびにM-GTA:修正版グラウンデッドセオリーアプローチを用いた分析)を実施し、研究成果として口頭発表をおこなうとともに、論文にまとめ、投稿をおこなう。 2018年度に実施できなかった、複数言語(ベトナム語、ネパール語、ミャンマー語、クメール語:カンボジア人用、中国語簡略字:大陸出身者用、中国語繁体字:台湾出身者用、韓国語を予定)の質問紙の完成と3大都市圏(関東、中部、関西)に留学している学生に対する質問紙調査を実施する。具体的には、日本語学校、専門学校、大学・大学院で質問紙の配布・回収・データの入力・分析を実施する。 質問紙調査の実施が1年ずれ込んだことから、2019年度末に研究期間を1年間延長する手続きをおこない、2020年度に上記の質的なデータと量的なデータを融合した説明モデルの構築などの作業をおこなう必要があると考える。具体的には、2019年度に収集したデータに対してより高度な量的分析(多母集団分析をともなう共分散構造分析等)を用いて、出身国や留学生が持つ個人特性(性別、出身国、母語、日本語運用能力、学校種、留学期間、留学の目的など)が、日本での就職への意識や日本人との友人関係の形成、日本文化への適応、留学満足度などとどのように関連しているのかについて統計的な解析をもとに明らかにする。加えて、質的なインタビュー調査と量的な調査結果と対比しながら検証して、質的・量的双方のデータの妥当性を明らかにするとともに、全体をよりよく説明するモデルの構築をおこなう。そして、それらを成果としてまとめて口頭発表をおこなうとともに、論文にまとめて投稿をおこなう。
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Causes of Carryover |
2018年度の人件費・謝金に大きな残額が出た理由としては、質問紙の作成に関わる作業(翻訳・バックトランスレーション作業)が遅れたことと、その質問紙を使った3大都市圏(関東、中部、関西)に留学している学生を対象とする質問紙調査を実施することができなかったためである。 そのため、2019年度の早い段階で翻訳作業を実施して、その際の人件費に充当するとともに、調査実施の際の研究協力者への謝金、数値データの入力作業や自由記述データの翻訳に必要な人件費に充当する。また、研究成果を学会・研究会等で発表する際の旅費・宿泊費に充当する。
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