2018 Fiscal Year Research-status Report
The educational effects of CLIL in the EFL elementary school context
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17K02885
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
保田 幸子 神戸大学, 大学教育推進機構, 准教授 (60386703)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ライティング能力の発達 / ライティング能力の評価 / 児童英語 / CLIL / 言語的特徴 / 結束性 / Voice |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き,調査対象である小学校で児童からライティングのデータを収集した.これは,一昨年から同じ児童のライティングがどのように変化したかを分析するためのもので,データは英語による手紙文であった.分析は,流暢さ(全体の語数),語彙多様性,手紙文全体のディスコース,文と文のつながりを示す結束性マーカー,書き手のvoiceなどの項目に注目して実施した.分析の結果,CLIL (Content and Language Integrated Learning)環境で学ぶ児童のライティングは,流暢さや語彙多様性などの形式面では実質的な変化は見られなかったものの,全体のディスコース,結束性, voice (i.e., EngagementやAttitude)を示す形容詞や副詞などの項目において,選択する単語や文法に変化が見られた.具体的には次のような変化である.(1)手紙文の結語の使用(Take care, See you soon等),(2)同じ単語の繰り返し(repetition)から代名詞 (it, they, them等)の使用へ,(3) 自己中心視点 (I want, I like)から,他者視点 (People are, The teacher is)への変化といった点である.これらの意味形成上の変化 (changes in meaning-making choices)は,ライティング能力の評価で一般に使用されているルーブリックには含まれていない言語的特徴であり,数値によるライティングの点数化だけでは見えてこない質的なものである.この結果は,英語を外国語で学ぶ児童のライティング能力の「発達」という側面に加えて,ライティング能力をどう「評価」するのかという問題についても重要な示唆を与えている,本年度は,この結果を論文で2本,国際学会で2回報告した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年,2018年とデータ収集を計画とおり実施することができた.分析も概ね順調であり,2017年,2018年と国際・国内の学術誌(査読付き)に論文が掲載されている.国際学会での発表では,同じ研究課題に関心を持つスウェーデンやカナダの研究者と交流することができ,今後の国際的学術交流にも発展していけそうな見込みである.また,国際ジャーナルへの論文掲載までの過程で,二名の匿名の査読者より,非常に有益なコメントをいただいたことで,本研究課題について新たな視点での分析が可能になった.具体的には,「書き手の"voice"」という視点を分析に加えること,また「ライティングの発達 (writing development)」だけではなく「ライティングの評価 (writing assessment)」という指標を分析の観点に盛り込むこと,である.こうした新たな視点も含めて,本年度はデータ分析をさらに深く丁寧に実施していく予定である.また,インパクトファクターの高い国際ジャーナルへの掲載を目標に,最新の先行研究のレビューを行うとともに,昨年執筆した論文の書き直しにも十分な時間をかけていきたいと考えている.学会発表は,オーストラリア応用言語学会とアメリカ応用言語学会,全国英語教育学会での成果報告を予定している.
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Strategy for Future Research Activity |
上述したように,本研究課題では,ライティング評価において,これまで一般的に使用されていたルーブリックには含まれていない言語的特徴(Engagement, Attitude, Cohesive Markers等)に目を向けることで,学習者の書き言葉の発達についてより広く深い理解が得られることが示唆された.今後は,さらにデータ分析を継続しつつ,ライティング評価のあり方について,研究者のみならず中高等学校の教員に向けても発信していく機会を作りたいと考えている.評価のあり方の再考は,ひいては指導のあり方の改革にもつながっていくことが期待される.ライティングの指導については,その理論的基盤から実際の方法論にいたるまで,現場の教員間で十分な理解が得られているとは言いがたい状況であることを考えると,このような発信の機会は長期的にも非常に重要な意味を持つと考えている.
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Causes of Carryover |
(未使用額が発生した理由) 2018年度に,CLIL環境下での英語学習者の言語的特徴について,北米で開催されるアメリカ応用言語学会で発表する予定であったが,倍率が年々高くなっている当該学会でプロポーザルが不採択となり,北米への旅費の申請が不要になったことから未使用額が生じた. (次年度における未使用額の使途内容) 本年度もアメリカ応用言語学会で最終成果報告を行うことを目標としている.未使用額は,北米への出張費に充てることとさせていただきたい.
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