2019 Fiscal Year Research-status Report
On the Learning Effects of Possible Expressions in Modern Chinese-An Empirical Analysis based on Introduction and Data Acquisition
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17K02900
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Research Institution | Atomi University |
Principal Investigator |
安本 真弓 跡見学園女子大学, 文学部, 准教授 (40533576)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 泰謙 関西外国語大学, 英語国際学部, 教授 (70468982)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 学生測定テスト / 教員アンケート / 現行インプット / 理解可能なインプット / 中国語可能助動詞 / 中国語可能補語 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度に得られた研究成果は、主に以下の5点である。 (1)、前年度(2018)にデータ拡充のために実施した学生向け可能表現習得状況の測定テスト(習熟度に合わせて「可能助動詞のみ」と「可能助動詞と補語」とに分けた)から得られた調査データ(計62クラス分、被験者総数1406名)を集計したうえで、2017年度に小規模的に実施した測定テストから得られた同調査データとの比較分析を行った。(2)、2017年度から2018年度にかけて、中国語教育に従事されている大学教員を対象に実施した可能表現の教室指導に関する「教員アンケート」(計24大学、教員数32名)の全データを考察・分析した。(3)、(1)の「測定テスト」分析結果と2018年度に考案した可能助動詞“能”“会”“可以”の「理解可能なインプット」の検証結果に、第二言語習得理論の中で扱われる「理解可能なインプット」に対して独自の観点を加えた、新たな「理解可能なインプット」のコンテクスト入り教案の作成を試みた。(4)、(2)の「教員アンケート」分析結果と2018年度に考案した可能補語の「理解可能なインプット」の検証結果を踏まえ、大幅な修正を加えた新たな「理解可能なインプット」(段階的な可能補語指導法)を考案した。(5)、(1)から(4)までの分析・考察等を通じて、「現行インプット」(刊行されている教科書による指導法)に関する教員の意見(不十分さを感じている点など)や、教員自身も実際にどういった場面で可能表現を使い分けるかを的確に説明できていないといった問題点を指摘するとともに、これまでに得られた知見を研究報告の形で国内(関西外国語大学)、海外(フランス・パリ第七大学、中国・南寧の広西民族大学)で発信した。また、報告会場でいただいたコメントやアドバイスを取り入れて論文にまとめることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度までの研究計画として予定していた、2018年度に拡充された無記名式測定テストデータの入力・整理及び2017年度実施分との比較分析、2017年度及び2018年度に実施した大学教員を対象とした可能表現指導法に関する「教員アンケート」調査データの整理と詳細な分析、第二言語習得理論とは異なる独自の観点を取り入れたよりわかりやすい可能表現に関する「理解可能なインプット」モデルの提示、そこから得られた知見をまとめた研究報告及び論文投稿、発表等はおおむね順調に進んだ。 一方で、「一つの研究結果を基に、それを即教育につなげるというのは短絡的である」(小柳・向山2018)と指摘されるように、現段階で提案した可能表現に関する「理解可能なインプット」について、研究結果の一貫性をさらに追求しつつ、改良を加えることでより信頼性の高い研究成果を教育現場に還元するため、より多くの中国語教員にご協力いただき、提案した「理解可能なインプット」の学習効果と問題点を見ていく作業をしたいと考えているが、この点がやや遅れている。加えて、これまでの「教員アンケート」調査のなかで、可能助動詞“可以”の否定形に“不可以”ではなく、なぜ“不能”を用いるのかに関する説明が見当たらず、用例を含めた提示をしてほしいとの指摘が散見されているが、現段階で提案している「理解可能なインプット」ではそれに対応しておらず、これを補完する作業も行いたいと考える。あわせて、これらの新たな知見を国内外のセミナー・研究会・学会等で積極的に研究報告し、より多くの専門家から幅広くコメントを頂きながら精度の高い中国語可能表現教授法を構築していくとともに、今までの研究から得られた成果のすべてをまとめた書籍を出版したいと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後については次の方針に基づき研究を遂行していく。 (1)集計データの分析結果を精査するとともに、改良版「理解可能なインプット」の検証作業を行う。2017年度では小規模的に、2018年度には日本全国の24大学において実施した中国語可能表現習得状況に関する学生向け「測定テスト」と、可能表現指導状況に関する教員向け「アンケート調査」から集計したデータに基づいた分析は昨年度に行ったものの、今年度も引き続き見落としなどがないか精査する。同時に、第二言語習得理論の定義とは異なる独自の観点を取り入れた、中国語可能助動詞のコンテクスト併用型「理解可能なインプット」(改良版)モデルと、中国語可能補語の段階的導入を図ったコンテクスト併用型「理解可能なインプット」(改良版)モデルについて、より多くの先生方の協力を仰ぎながら、実際の教育現場で導入し、その検証作業を行う予定である。 (2)前年度に提案した改良版「理解可能なインプット」モデルの更なる進化を図る。多くの大学教員に、改良版「理解可能なインプット」の教室指導での導入を依頼し、実際の教室指導の中で生じた問題点やそこで得られたアドバイスなどをより包括的に捉え、分析・考察を進めたうえで、より一層高い学習効果が期待できる、より合理的な教授法となり得る進化型「理解可能なインプット」の開発を目指す。 (3)研究報告及び論文執筆を行い、学術雑誌へ積極的に投稿する。上記の分析及び考察によって得られた研究成果や新たな知見を学術論文としてまとめ上げ、より幅広く発信すべく国内外の学術雑誌に投稿し、中国語教育を中心とする研究分野への貢献を図る。 (4)総括的な研究報告書を作成する。今年度の1年延長分を含む、計4年間で行った各種学会における研究発表や投稿論文などを中心に加筆修正し、最終的には総括的な研究報告書を作成したうえで、書籍の形としてまとめ上げ出版する予定である。
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Causes of Carryover |
(1)今年度は改良版「理解可能なインプット」モデルを再構築していたが、多くの大学教員に協力依頼し本モデルを教室指導の中で実践して頂き、それを進化させるための検証作業がやや遅れている。次年度は繰り越された金額の一部をこの協力依頼をする教員への謝金に充てる。 (2)上記(1)の検証作業の推進、分析、及び研究報告や論文執筆等に、研究分担者との打ち合わせが必要不可欠であり、次年度はそれに一部費用を充てる。 (3)次年度では上記(1)による分析及び考察によって得られた研究成果と新たな知見をまとめ上げたうえで、学術研究会などで発表を行う予定であり、一部はそのための出張経費に充てる。
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Research Products
(8 results)