2019 Fiscal Year Research-status Report
発達の最近接領域(ZPD)を踏まえた授業内言語活動における教授行為分析
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17K02909
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
今井 裕之 関西大学, 外国語学部, 教授 (80247759)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 達弘 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (10240293)
名部井 敏代 関西大学, 外国語学部, 教授 (20368187)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 授業談話分析 / インプット再考 / 発達の最近接領域 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、それまでに収集した授業のデータ分析に加えて、授業担当教員に対しての1年間の実践を振り返るインタビューの実施を予定していたが、それが叶わなかった。 2020年度に、あらためて授業者らへのインタビューデータを追加することで、授業の談話分析と授業者のインタビュー分析を踏まえた、研究の総括ができるものと考えている。これまでの授業談話分析から明らかになった点としては、授業者の言語習得についてのビリーフが、授業談話のパターンに影響を与えていると思われること、特に学習言語の「インプット」量を多くするという、英語教育研究者実践者の間で一般的に用いられる言説についての認識が、教室での授業行動に影響を与えている可能性が示唆されている。「インプット」とは、音声または文字によるテクストを、解説等なく聴かせたり読ませたりする教師側、聴いたり読んだりする学生側の行為を指すが、この行為自体が言語修得を保証するものではないにもかかわらず、「インプット量は大切」という言説以上の考察や分析がないままの教師行動と、それ以上の考察を経て授業を行う授業者の行動との差異を授業談話分析から考察してきた。この結果を踏まえて、今後複数の授業者に授業ビデオを見ながらのインタビューを実施することで、英語教師の授業行動の様式の分析を深め、本科研の課題である、学習者の発達の最近接領域での言語活動を促すための方法について、授業行動面と教師の言語習得観、授業観等のビリーフの面との両面からアプローチし、授業改善を促す方法を提案する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度末をもって終了する予定であったが、新型コロナウイルス感染症拡散防止のため、研究対象である学校が閉校となり、研究の継続が困難な状況が続いている。当初から研究が遅れていたことは否めないが、成果をまとめる上で追加・補完したいインタビューデータの収集ができず、研究のまとめを行うことができなかった。 授業の記録・分析の許可を得るプロセスに、時間や手間がかかることも影響している。それ自体は倫理規定のより厳格な適用の現れであり、研究上望ましいことではあるが、一方で時間や手間を、学校教育現場で働く教員や保護者にかけることにもなるため、承諾を得にくくなっていることも否めない。今回の研究は、特定の授業実践を長期的に調査するというよりも、多様な教室での複数の教師と学習者間の談話分析を必要とする研究であるため、この手間と時間がかかる研究となっている点も、想定外に時間がかかった一因である。 幸い、授業談話の分析も進み、一定の成果を生み出せる見通しが立ってきたため、現在はその成果へと収束させる方向へ研究時間を集めることができると考えている。今後のデータ収集の対象も、学習者ではなく教員個人であるため、個人および組織の承諾も得やすく、スムーズに進むものと楽観している。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度に、学校授業再開後の状況を把握しながら、学校教育現場に負担をかけないよう配慮を行って、インタビュー等によるデータ収集を継続する。高等学校や中学校の3年生に関わる教員、生徒たちには、入学試験に対する大きな不安を抱えていることを鑑み、極力データ収集等を避けて、他学年を対象としてデータにより補完することを検討する。 前述の通り、研究成果のまとめの方向性に見通しが立ち、研究対象も「授業談話」から「教師のインタビュー」に移っているため、許諾を得る対象とのやりとりを効率よく進めることができること、授業談話よりは教師へのインタビューのほうが、分析しやすい(分析の視点を焦点化しやすい)ことから、今後はスムーズに研究が進み、成果のまとめもより計画的に進むことが見込まれる。 新型コロナウイルス対策で学校が多忙を極める中で研究協力を得にくくなったり、第二波等への懸念から、外部からの訪問者を学校が敬遠するなどの懸念事項はあるが、学校外でのインタビュー実施、オンラインでの実施などの方法で対応することは可能だと考えている。
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Causes of Carryover |
2019年度で終了する研究であったが、データ収集の過程で想定以上に時間がかかったこと、授業談話分析の過程で思った研究成果を生み出すのに時間がかかったこと、補完的なデータ収集が、新型コロナウイルス感染症の影響による学校閉鎖等によりできなかったことから、研究費の使用が叶わなかった。 2020年度、学校の環境が改善するのを待って、学校訪問や教員へのインタビューデータを収集し、研究成果のまとめを行うために研究費を使用したい。現時点では、招待発表予定だった学会が2つ開催中止となり、発表の場をこれから探す必要があるが、今年度中の開催学会が見つからない場合は論文投稿等の成果報告手段とし、研究費用もそれに当てることとする。
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Research Products
(3 results)