2018 Fiscal Year Research-status Report
漢字文化を基礎とした中期朝鮮語文法および語彙表の開発
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17K02962
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Research Institution | Kumamoto Gakuen University |
Principal Investigator |
矢野 謙一 熊本学園大学, 外国語学部, 教授 (00271453)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岸田 文隆 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 教授 (30251870)
植田 晃次 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 准教授 (90291450)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 十五世紀朝鮮語 / 語彙 / 文法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の計画は、日本語話者が中世朝鮮語の文献を、現代朝鮮語を学ぶことなく、日本語で直接に原文を解釈できるよう文法を記述し、基礎語彙表を作ることをめざし作業を進めている。初年度は既存の語彙表を基礎に手書き原稿を作成し、それについて語彙を補充し修正を加えることであった。ほぼ語の採集は予定通りに進行している。例文の和訳と語源の記述などは遅れ、今年度に持ち越されて、引き続き作業がおこなわれている。文法の記述は、表記法、音韻、品詞論、単語の構造と形成、体言での助詞の交替、用言の活用について手書き原稿を作成した。体言での助詞の交替、用言の活用については、現代朝鮮語を学ぶことなく、日本語で直接に原文を解釈できるような形式に至っていないとの指摘が2018年度の第1回研究会であり、2018年はそれを受けて形式を様々に検討し、改めた案を2019年3月の研究会に提出し、形式が決定され、その形式にしたがった改稿の作業にあたった。統語の箇所については、改稿が完成した後に着手する。文献解題は本文に使用した例文の出典を中心に作成する予定である。この間、従来の古語辞典記述内容をどこまで取り入れるかという問題が現れ、その具体的な解決方法をもとめ、資料の収集をかねて、韓国への出張を行った。 ここで古語の記述についての簡潔ではあるが、便利な方法の知見を得た。これは語彙表に反映される予定である。本研究は最終的には手書き原稿を電子ファイル化して成果を共有することを目指しており、研究計画の通り、今年度は電子ファイル化を進めることにしている。ただ、この入力は業者に委託しようとし、試してもらったところ、入力に誤りが多く、自分たちで入力した方が時間的に速いものの、残された時間には限りがある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2018年度は研究計画通りの進行ができた。表記法の変遷については、15世紀に使用された諺文を母音および子音を提示し、縦書きおよび表音の原則に基づいた表記法の原則についての手書き原稿を作成し、研究会で検討を加えた。 品詞論については手書き原稿を作成したが、初めて15世紀語に接する人には術語などがわかりにくく、従来の朝鮮古語文法と変わらぬと言う分担者からの指摘を受けた。これを受け、原文に注釈を加える形式、原文に漢文を加え漢文を参考に原文を解釈する形式、漢文読み下し文と原文を対照し注釈を加える形式などを試作し、3月の研究会で最終的な形式を決定した。 語形成について本来は詳述するつもりであったが、単語家族を取り上げざるをえず、そこに現れる単語は特殊な語が多く、これもまた原稿を読む限り、難解さを印象づけるとの議論があった。語形成は語彙表の単語を説明するのに必要な範囲にしたほうが、理解しやすいと判断し、原稿をより簡潔な記述にし、可能な限り単純にした形で、語彙表のなかに入れることにした。 文献解題は、解説する予定の文献の選択は終わったが、先年度の研究進行の遅れの影響で、手書き原稿を完成できないでいる。音韻では、高低アクセント記号(傍点)を採用すべきか否かについて意見が分かれ、現在も高低アクセントが残る地域を歩いた結果、一部の単語(同字異高低語)のみの注釈ですませることにした。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は計画では原稿の改訂と電子ファイル化をなす予定としている。今後の電子ファイル化の進捗にあたって課題となるのは古語の入力である。語彙表の一部はすでに電子ファイル化に着手している。ただこの作業の進度は予想よりも遅くなっている。不慣れということもあるが、システム自体が現代語や英語に対応するのが主たる方向で開発されているため必要なキー操作の数が増えるためである。いずれにせよ、今年度は文献解題の手書き原稿を脱稿することと語彙表と文法の電子ファイル化を行う。1年目の作業の遅れを取り戻すのにいっそうの時間が必要と予想される。研究計画で述べた最終年度の改訂はそれなりになされたが、電子ファイル化が終わり次第、その上での改訂作業を行うつもりである。
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Causes of Carryover |
手書き原稿を電子化するため専門業者に依頼するつもりであったが、手書き原稿の完成が遅れ、予算を使い切れていない。また入力については「5.」と「8.」で述べたような課題があり、昔の諺文、現代のハングル、旧字体の漢字、当用漢字、ひらがな、発音記号を同じファイルの中で共存させ、正確に入力することは国内ではかなり費用と時間がかかるようである。その解決のためハングル入力の本場である韓国で入力を行うか、われわれ自身の手で入力できるものなら韓国にでかけ、解決法を学んで入力を行いたいと考えている。
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