2021 Fiscal Year Research-status Report
漢字文化を基礎とした中期朝鮮語文法および語彙表の開発
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17K02962
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Research Institution | Kumamoto Gakuen University |
Principal Investigator |
矢野 謙一 熊本学園大学, 外国語学部, 教授 (00271453)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岸田 文隆 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 教授 (30251870)
植田 晃次 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 教授 (90291450)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 中期朝鮮語 / 語彙 / 文法 / 漢字文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本語話者が中世朝鮮語の文献を、現代朝鮮語を学ぶことなく、日本語で直接に原文を解釈できるよう文法を記述し、基礎語彙表を作ることを目的とするものである。その際、戦前の日本人研究者が行った中世朝鮮語の研究の方法を採用し、蓄積を生かし、中世朝鮮語の文法と語彙表を作成することを試みる。方法は、文献の多く漢文の朝鮮語訳であることに着目して、まず「諺解」の部分を粗訳し、漢文と漢字の意味を把握し、「諺解」と対照し、中期朝鮮語の単語と文法形態を採集し中期朝鮮語-漢文(漢字)-日本語の3本柱で文法と語彙表を作成する。さらに1950年代から韓国や北朝鮮で発表された中世朝鮮語文法、歴史文法と語彙記述と1980年代に簡潔な中世朝鮮語文法を発表した中国の成果と照らし合わせて検討を加える。 2017年度は『龍飛御天歌』をはじめとする主な文献の中期朝鮮語-漢文(漢字)-日本語の注釈を終え、語彙表の作成に当たった。2018年度は文法に移り、手書きの原稿の作成にかかった。2018年度から手書き原稿の電子化を試みたが、古語の文字、発音記号、旧字体、常用漢字体、現行ハングルを同じ画面に入力するのに予期しない困難が発生した。2018年度後半から2019年度8月までこの問題の解決に時間を費し、8月下旬にすべて解決をした。2019年度9月に「語彙表」の入力を終え、2月には文法記述に必要な例文の「諺解」の部分、漢文、読み下し文の入力の大半が終わった。文法の解説については現代語の研究者による検討を待っ ている。残余については共同研究者との交流再開ができず作業が中断している。現在、韓国でのコロナの流行のため現地での調査ができておらず、その部分の研究は中断している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
古語の文字、発音記号、旧字体、常用漢字体、現行ハングルを同じ画面に入力するために発生した予期しない問題を解決するため、2018年度後半から2019年度8月まで時間を費し、これで約1年遅れた。2019年度9月から手書き原稿の「語彙表」の入力をはじめ、文法記述に必要な例文の「諺解」の部分、漢文、読み下し文の入力を2020年2月には終えた。しかし、2020年1月以降に予定していた研究会と原文確認のための韓国出張が新型コロナ流行のため不可能となり、原稿と原文の照合や現代語の研究者による解説の検討は止まったままである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は「語彙表」の規模をより大きくするため、例文に使った「諺解」以外の文献にあたり、単語を採集してゆく。文法の解説部分は、県境を越えて出張が可能となり、近畿圏に新型コロナ流行前のように自由に行動できるようになれば、現代語研究者と共同の研究会を開き、文法の解説箇所を検討し修正を加えるつもりである。また中期朝鮮語の原文の曖昧な箇所は,韓国への出張が、コロナ以前のように自由かつ安価に行えるようになれば、すぐに着手するつもりである。研究結果の公表は不完全なものは発表できないので、研究計画より遅れる。国内でできることをやり、原文との照合や解説の完全を期し、しかし、かつてのような往来が無理な場合は、大方の原稿を作成した段階で止め、条件が整った後に完成するつもりである。
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Causes of Carryover |
2017年度は熊本地震の翌年にあたり、当時、学部長職にあり、前年度に非常事態ということで無理した運営のひずみが現れ、業務が多忙となった。翌年、市販のワープロソフトで漢文(旧字体)、朝鮮語の古語(昔使われたハングル)、現代日本語本語の3つの言語を共存させるには問題があるとわかり、解決に時間を費やした。コロナ禍により韓国出張や共同研究者のいる大学への出張が不可能となったため。 原文との照合のための韓国出張、研究会開催のための旅費、必要な機器の購入などに使用する計画である。
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