2017 Fiscal Year Research-status Report
統語構造と情報構造の接点における英語プロソディの習得ー効果的な指導に向けてー
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17K02969
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
藤森 敦之 静岡大学, 情報学部, 講師 (80626565)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米山 聖子 大東文化大学, 外国語学部, 教授 (60365856)
吉村 紀子 静岡県立大学, その他部局等, 特任教授 (90129891)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | インターフェース / プロソディ / フォーカス / 機能語 / 母語転移 / 知覚と産出 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は文法モジュールのインターフェイスで生じる習得上の問題に取り組む共同プロジェクトであるため、初年度となる平成29年度は、それぞれの領域(統語・談話・音韻・L2習得)を専門とする研究者間の連携を緊密に取り合い、研究プロジェクト全体と各部門の研究目標を確認した上で、各研究者の担当項目を決定し、その計画案に沿って研究を進めて行った。年度初めに第1回打ち合わせ会議を開催し、続く会議(計8回)を通して、調査項目をプロソディに関連するフォーカス、機能語、および句境界に絞り込み、調査に用いる知覚および産出テストの実験文を作成した。これらの実験文を用いて、本研究に携わる各大学にて予備実験を開始した。さらに、実験の統制群として英語母語話者からデータを収集するため、海外共同研究者の協力を得て、アメリカの大学生を対象に実験が実施できるよう同意書等の環境整備を整え、実験を行った。機能語、特に冠詞のプロソディに関する実験では、ナラティブの産出データを収集した。英語の冠詞は機能語であり、弱く発音されるのに対し、日本語には冠詞が無いために、内容語である指示語として理解される。この形態統語的な母語転移のため、日本語を母語とする英語学習者は英語における冠詞を強く発音していた。これら予備実験の結果は国内外の学会にて報告し、様々な分野の研究者と有意義な意見交換をすることができた。年度末には海外の研究協力者も交えて研究打ち合わせ会議を開催し、これまでの研究成果に基づいて、実験のデザインおよび実験文の修正を行い、次年度の研究推進に向けて準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
産出および知覚に関する予備実験を行った。産出実験では、ナラティブに関する発話データを収集し、データベース化した。これに基づき、冠詞や代名詞といった機能語に関わるプロソディ(高さ・強さ・長さ等)の分析を行い、英語母語話者と日本語を母語とする英語学習者のデータを比較検討し、その結果を国内外の学会で発表した。知覚実験については、英語母語話者のプロソディに関する先行研究を参考としながら、新たな実験文(ダイアログ)を作成し、英語母語話者に吹き込みを依頼し録音した。英語母語話者および第二言語学習者の反応について取りまとめ、複数回の会議を開催して、予備実験における問題点(文脈および統語論的、音韻論的な環境によるプロソディへの影響や吹き込みの速度等)の洗い出しを行った。最終的には、これらの問題点を考慮しながら実験文(ナラティブおよびダイアログ)を新たに作成・録音し、来年度に本実験を実施する準備を整えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度はまず、ナラティブおよびダイアログを用いて産出および知覚に関する本実験を速やかに実施するとともに、実験結果を取りまとめ、国内外の学会に論文を投稿していく。また、実験で得られた習得に関わるデータ分析と平行して、英語プロソディに関する英語指導法の先行文献にあたり、分担者らと意見交換をした上で、第二言語としての英語におけるプロソディ改善に向けた具体的な指導法を検討し、実際の教室で実施していく。実践の成果として、指導前と指導後のデータを収集・精査し、指導効果について、理論的な習得分析とあわせて学会等で発表を行う予定である。さらに、母語転移の可能性についてより深く考察するため、アメリカやカナダでの現地調査を行い、英語母語話者による第二あるいは第三言語としての日本語学習についてもデータを収集し、L1日本語ーL2英語、およびL1英語-L2日本語といった双方向の習得について分析を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
研究分担者の体調不良により、出席予定の学会に参加できなかったため、次年度使用が生じた。次年度では収集するデータの量が増加することが見込まれるため、当額分をデータ分析・入力の謝金に当てる。
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Research Products
(6 results)