2017 Fiscal Year Research-status Report
ニューラルネットワークを用いた第二言語習得モデルと母語干渉の研究
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17K02971
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
小林 昌博 鳥取大学, 教育支援・国際交流推進機構, 准教授 (50361150)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 第二言語習得 / 転移 / ニューラルネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ニューラルネットワークモデルを用いて、英語学習における日本人英語学習者の母語の知識の転移を研究する。初年度にあたる29年度は、blockingと呼ばれる現象、具体的には外国語学習においてある形式Aがある意味Bと学習成果により結びついた後で別の形式Cが既習の意味Bと結びつくことが妨げられる現象に着目した。設定課題としては、日本語の状態を表す「~テイル形」の動詞の知識とそれに対応する英語の接尾辞の学習及びその学習順序の影響を調べた。実験の参加者は、学習の順序を踏まえて中学3年生、高校1年生、大学生の3段階を設定した。日本語の「~テイル(食べテイル、など)」は、英語の現在進行形(中学1年次で学習)では「~ing形」として表現される一方、高校1年次に学習する過去分詞形(excited(興奮しテイル))のように「~ed形」として表現されることもある。 結果は、過去分詞形で表現されるテイルを未学習の中学生では、予想通り、日本語テイルに対してすべてing形の接尾辞を選んでしまう傾向にあることがわかった。しかし、高校生では、その差が有意ではなくなり、大学生を対象とした実験では、逆転の結果となった。このような学習履歴と接尾辞の習得の関係性の妥当性をさらに調べるため、ニューラルネットワークを用いて学習のプロセスをシミュレートした。進行形、受け身そして分詞形容詞を学習し終えた時点でing形とed形に対応する日本語出力の再現率を調べると中学生の結果と同様にed形の方が低い再現率を示した。さらに、接尾辞の学習のために意味情報(ここでは意味役割)を学習に用いることで結果に差があるかを見た。そうすると、ing形とed形に対応する日本語出力の再現率に逆転が生じた。これは、動詞の項の意味役割や自他の違いなどの意味的な情報が2項目の御用の差の解消に寄与する可能性があることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、英語学習者の母語干渉を説明するヒューマンモデルを構築しながら、ニューラルネットワークを用いた学習モデルも構築し、母語干渉の影響を再現することである。この作業によって実際の学習者とコンピュータ双方のモデルが構築され、さらなる応用も期待される。29年度はこれらの作業のうち、学習者を対象としたBlockingの実験を実施することができた。また、ニューラルネットワークモデルを作り、学習者を対象とした実験と同じ結果を得ることができた。現段階では、実施計画にそった研究を実施できていると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も英語と日本語間の母語干渉の研究の詳細化を進めていく予定である。特にpreemptionと呼ばれる現象、ある統語構造Aが意味概念Bと連想学習により結びついた場合、その後別の統語構造CとBが結びつくのを防ぐ過剰生成抑制メカニズムを研究する予定である。また統語構造のみならず、ライティングの能力のようなディスコースレベルの学習とその学習方法のシミュレーションなども行う予定である。
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Causes of Carryover |
残額は189円で、特に何か研究の遂行を妨げることがあったわけではない。
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